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Dawkins, The God Delusion

Dawkins, R., The God Delusion, Bantam Press 2006.

2015年1月31日 土曜日 晴れ

The God Delusion UNABRIDGED By Richard Dawkins
Narrated By Richard Dawkins, Lalla Ward
Length: 13 hrs and 52 mins Release Date: 12-05-06

Dawkins, The God Delusion スタート。

1.オーディオブック版に関して:
今回は unabridged 版のオーディオブックを見つけて(一日だけ考慮日を過ごした上、それ以上は迷うことなく)昨日購入した。いつもながらドーキンスさんの朗読が聴けるのは私には大変ありがたい。私の購入して持っていたオーディオブックはCDで6枚組の abridged 版 Random House Audiobooks 2006 だったのでとても不便だった。abridged 版の場合には、聴いていて話が途中で飛んでしまうし、原書の本文を参照することが大変面倒で迷惑することが多い。今回は Amazon.com の一部門 Audible.com から購入した。
今日 Amazon.com のページで調べてみると同じものが、Tantor Audio; MP3 – Unabridged CD edition (January 19, 2007) となっているので、2007年にはすでに手に入ったのではないかと思われる。またこれも今まさに気付いたのだが、6枚組の abridged 版 Random House Audiobooks 2006 のCDケースの裏面の一番下のところには unabridged 版が www.audible.co.uk からダウンロードで手に入ると書かれている。もともと2006年にも買えたのであろう。恐らく当時の私の調べ方が至らなかったのであろう。あるいは、ダウンロードという形に躊躇があったのだろう。今となっては悔やまれる。

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2.紙の本とその出版社に関して:
一方、私の持っている原書は2007年 Black Swan 版。ブラックスワンというのは、Transworld Publishersのペーパーバックスを扱う部門らしい。Black Swan is an imprint of Transworld Publishers and publishes bestselling authors such as … in paperback. とのこと。さらに Transworld Publisher は何か wiki で調べると、Transworld Publishers Inc. is a British publishing division of Random House and belongs to Bertelsmann, one of the world’s largest media groups. It was established in 1950, and for many years it was the British division of Bantam Books. It publishes fiction and non fiction titles by various best-selling authors including … under several different imprints. Hardbacks are either published under the Doubleday or the Bantam Press imprint, whereas paperbacks are published under the Black Swan, Bantam or Corgi imprint. とのこと。WEB で調べてみると、ハードカバーは、Houghton Mifflin Harcourt (HMH) (1 Oct. 2006) から出ている。どことなく複雑な出版会社事情がありそうだ。通の方に説明してもらわないと理解不能。

3.この本の紹介について:
アメリカアマゾン本家の同書のページでは以下の通り紹介されている: A preeminent scientist — and the world’s most prominent atheist — asserts the irrationality of belief in God and the grievous harm religion has inflicted on society, from the Crusades to 9/11. With rigor and wit, Dawkins examines God in all his forms, from the sex-obsessed tyrant of the Old Testament to the more benign (but still illogical) Celestial Watchmaker favored by some Enlightenment thinkers. He eviscerates the major arguments for religion and demonstrates the supreme improbability of a supreme being. He shows how religion fuels war, foments bigotry, and abuses children, buttressing his points with historical and contemporary evidence. The God Delusion makes a compelling case that belief in God is not just wrong but potentially deadly. It also offers exhilarating insight into the advantages of atheism to the individual and society, not the least of which is a clearer, truer appreciation of the universe’s wonders than any faith could ever muster.

以下はイギリスアマゾンの Bantam Press; 1st edition (2 Oct. 2006) ページではアメリカアマゾンのページとは違った内容で紹介されている。以下引用:  The God Delusion caused a sensation when it was published in 2006. Within weeks it became the most hotly debated topic, with Dawkins himself branded as either saint or sinner for presenting his hard-hitting, impassioned rebuttal of religion of all types. His argument could hardly be more topical. While Europe is becoming increasingly secularized, the rise of religious fundamentalism, whether in the Middle East or Middle America, is dramatically and dangerously dividing opinion around the world. In America, and elsewhere, a vigorous dispute between ‘intelligent design’ and Darwinism is seriously undermining and restricting the teaching of science. In many countries religious dogma from medieval times still serves to abuse basic human rights such as women’s and gay rights. And all from a belief in a God whose existence lacks evidence of any kind. Dawkins attacks God in all his forms. He eviscerates the major arguments for religion and demonstrates the supreme improbability of a supreme being. He shows how religion fuels war, foments bigotry and abuses children. The God Delusion is a brilliantly argued, fascinating polemic that will be required reading for anyone interested in this most emotional and important subject.

そして、アマゾンジャパンの原書の紹介は、日本語のシノプシスとそれに対応する英語が併記されている。英語の方はイギリスアマゾンのページの英語そのままである。

以下、アマゾンジャパンの原書の紹介から引用。Synopsis:『The God Delusion』は2006年に刊行されてセンセーションを巻き起こした。発売後ほんの数週間で最も熱い論議を呼ぶ話題の書に。あらゆるタイプの宗教に対してパンチの効いた熱っぽい反駁をおこなったことでドーキンス自身は聖人、あるいは罪人の烙印を押された。彼の主張はまさに時流に乗っている。ヨーロッパは一段と世俗的になりつつあり、中東であれ中央アメリカであれ、宗教的なファンダメンタリズムの勃興が劇的にそして険悪に世界中の意見を分断している。アメリカでも他の国でも、“インテリジェント・デザイン(知的設計論。生物の発生や進化を「知的存在」の関与で説明)”とダーウィン説との盛んな論争が、科学の学習を緩やかながら深刻に妨害し規制しつつある。多くの国で、中世からの宗教定義が女性やゲイの権利といった基本的人権への侵害にいまだに手を貸している。すべては存在を証明するものが何もない神への信念に端を発しているのだ。ドーキンスはあらゆる方法で神を攻撃する。宗教の最大の主張を骨抜きにして、絶対的な存在すなわち神が絶対に実在しないと論証する。宗教がいかに戦争を煽り、偏狭な考え方を冗長し、子供を虐待しているか示す。『The God Delusion』は切れ味鋭い主張が満載、この最も感情的で重要なテーマに興味のある読者のほうも、熱く自説を語りたくなることだろう。以上、引用終わり。アマゾンジャパンの同書(英語原書)の紹介ページより。

上に引用した日本語訳は英語版の精確な訳になっていない。たとえば、「科学の学習を緩やかながら深刻に」となっているが、英文には「緩やかながら」などとぼかす単語は存在しない。「宗教定義」は、religious dogma (宗教の教義)の誤訳。「(読者も)熱く自説を語りたくなることだろう」などという達意訳(デタラメ訳): fascinating polemic (魅力的な論争)はドーキンス本の方であり、原文は、「(潜在的読者の)皆さんはまずは読んでみてください」というほどの文脈である。これら多くの迷訳はどうしてまぎれ込んだのか。ひょっとするとこの日本語訳はコンピュータによる自動機械訳かもしれない。そうだとすると、ここまで進化したのはすばらしい、もうあと一歩だ頑張れ、と褒めるべき立場かもしれない。しかるべき校正は必須だと思うが。

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一方、日本語訳も2007年には早川書房 (2007/5/25) から出ている。イギリスアマゾンの引き写しではなく、オリジナルの文章である。以下はアマゾンジャパンの同書のページから引用。人はなぜ神という、ありそうもないものを信じるのか? なぜ宗教だけが特別扱いをされるのか? 「私は無神論者である」と公言することがはばかられる、たとえば現在のアメリカ社会のあり方は、おかしくはないのか……『利己的な遺伝子』の著者で、科学啓蒙にも精力的に携わっているドーキンスはかねてから宗教への違和感を公言していたが、本書ではついにまる1冊を費やしてこのテーマに取り組んだ。彼は科学者の立場からあくまで論理的に考察を重ねながら、神を信仰することについてあらゆる方向から鋭い批判を加えていく。宗教が社会へ及ぼす実害のあることを訴えるために。神の存在という「仮説」を粉砕するために……古くは創造論者、昨今ではインテリジェント・デザインに代表される、非合理をよしとする風潮が根強い今、あえて反迷信、反・非合理主義の立場を貫き通すドーキンスの、畳みかけるような舌鋒が冴える。発売されるや全米ベストセラーとなった超話題作。以上、アマゾンジャパンの同書のページから引用終わり。

古くからのドーキンス本の読者としては、「宗教への違和感」という曖昧な表現が間違っていると思う。つまり、ドーキンス氏は常に、明確に真正面から宗教や神に関して多くの著作のなかで論じてきているからである。

6枚組の abridged 版 Random House Audiobooks 2006 のCDケースの裏面に書かれている紹介文は、上に引用したアマゾンのアメリカとイギリスを足したような文章になっており、これが両者の淵源するオリジナルであろう。ここでは、’As the author of many classic works on science and philosophy, he has always asserted the irrationality of belief in God and the grievous harm it has inflicted on society.’ と書かれている。assert は、辞書を引くと、断言する・強く主張するの意。上に述べたように、こちらの表現の方が正しい。「宗教への違和感」というような曖昧なもの ‘gut feeling’ ではなく、サイエンティストとして科学に徹した視点から発言を今まで行ってきていたのである。

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4.多くの反論本に関して:
アマゾンのページ検索などでは、このドーキンス本に反応して多くの反論本その他が出版されているようだ。私に残された時間を考えると、アマゾンのページにするすると出てくる多くの反論書のすべてをひもとく余裕はなさそうだ。

5.私なりのドーキンス本への招待:
私のWEBページではオリジナルのドーキンス本に関して折に触れて紹介してみたいと考えている。どんな書き方が妥当かと考えてみると、まずは個々の事柄に対する私の注釈のような形でノートを書き付けてみることからスタートするのが筋だと結論した。以下、そのタイプの断片を書き綴ってゆく。

6.ドーキンス本とアチャーリャS本(ないしD.M. Murdock本)の比較: アチャーリャS本は歴史書ないし宗教に関する文献学ないし文化人類学関連の書物に分類すればよいだろうか。これに対し、ドーキンス本は、「広い意味での科学」の書といえる。あるいは、私流の科学の定義に則れば、科学する心でしっかりと最後まで追求された科学書といった方が当てはまるかもしれない。ドーキンス本の中にアチャーリャの扱っている歴史書(文献学)の世界は含まれるように思う。ドーキンス本では人類の進化史という雄大な流れの中で宗教をとらえ、その起源、人間社会との関係・役割、そして今後の私たち人類の選ぶべき道、などに関して考察してゆく。科学者の視点から、科学として真剣に「神」と宗教に対している。科学する心でしっかりと追求された科学書と呼びたい所以である。
アチャーリャS本(ないしマードックD.M. Murdock本)で扱われる対象は、ドーキンス本では argument from scripture (Dawkins, ibid, p117-123) に対応する内容である。だからドーキンス本よりもずっと狭い。だからこのポイントに関して非常に詳しい。ユダヤ教やキリスト教はもちろん、古代エジプトやメソポタミア起源の宗教、仏教やミトラ教・マニ教その他広くさまざまの宗教信仰に関して、歴史文献・人類学的研究などのエビデンスに基づき、その起源を詳しく解き明かす人文科学的な記述となっている。
残念ながら、私の今回調べた限りでは、アチャーリャS本(ないしD.M. Murdock本)のオーディオブックは販売されていないようだ。どうして朗読されないかはわからない。朗読があると老眼の門外漢には取り付きやすくて大変助かるのだが。それはともかく、非常に価値ある本たちなので、彼女の本と彼女が引用する多くの学者たちの仕事に関しても今後紹介してゆきたいと考えている。

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