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現実肯定の思想:与えられた現象世界に安住する日本人の思惟方法

2016年2月5日 金曜日 曇りのち晴れ

中村元 日本人の思惟方法 中村元選集決定版 第3巻 春秋社 1989年

与えられたこの現象世界のうちに安住するという思惟方法は、近代の宗派神道にもあらわれている。たとえば金光教祖は「生きても死んでも、天と地とはわが住み家と思へよ」と教えている。道元がシナの禅宗を批判し、禅の思想を変容、あるいは特定の説を強調したのとちょうど同じしかたにおいて、伊藤仁斎はシナ儒学を批判し、それを変容している。仁斎は、天地を一大活動作用の展開とみなし、ただ発展あるのみと考えて、死なるものを否定した。(中村、同書、p20)

とくに中世の日本においては、草木にも精神があり、さとりを開いて救われることもできるという思想が一般に行われていた。(中村、同書、p21)

「法華経」原文によれば、「釈尊が成仏した」のであるが、日蓮によれば「われら衆生がすでに成仏した」のである。(この場合「御義口伝抄」が日蓮の真意を伝えているかどうかは問題とならない。とにかくこのような解釈を日本人が考え出したのである。)
 ここにおいて現実肯定の思想が行きつくところまで行きついたということができるであろう。(中村、同書、p23)

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