福島県での甲状腺がん多発に対して早く有効な対策を立てる必要がある。

2016年3月5日 土曜日 快晴

津田敏秀 福島・甲状腺がん多発の現状と原因 世界(岩波書店)p87-p100 第八七九号 2016年3月

年間100万人あたり一人か二人発生のがんが35万人中112人見つかっている。(津田、同書、p96)

福島県での甲状腺がんの桁違いの多発はもう現実のものとなっている。・・津金センター長は、その桁外れの多発の多くが過剰診断で説明できるとしており、私(津田)は、その多くが原発事故による増加であると主張している。いまや問題は、多発を、過剰診断と原発事故の二つの原因で説明し、その二つのブレンド具合がどうなのかということなのである。前者の、検診によって潜在するがんとも言えない腫瘤を検出している可能性は、検出されたがんの一部でしかなさそうであることは、検出割合の福島県内でのばらつきや、チェルノブイリでのデータ、福島県での手術後所見から言える。・・福島県で、今後、このようななんらかの上昇傾向が生じることはもはや避けがたい。(津田、同書、p98-99)

今はもう多発しているか否かではなく、対策を立てる段階である。どのように早く有効な対策を立てるのかが今問われているのである。(津田、同書、p100)

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外部比較である発生率比と内部比較である有病オッズ比の結果(采薪の2015年11月30日発表までのデータ):
(津田、同書、p89の表)一巡目(2015年6月30日締めの確定版)は、外部比較で20から50倍の多発が生じており、・・(内部比較の有病オッズ比の情報では)・・0倍の地域を除くと最大2.6倍の違いが見られている。二巡目検診(本格検査)の結果は、・・すでに一巡目の倍率や有病割合を上まわり始めている。・・これに事故から検診までの期間を考慮すれば・・原子力発電所に近い地域ほど多発していることがわかる。(津田、同書、p93より抜粋引用)

スクリーニング効果と過剰診断
スクリーニング効果:検診によって発生率より多めのがんが見つかることは避けがたい。
過剰診断:将来的に症状が現れたり命を脅かしたりすることのないがんを診断で見つけてしまうこと。(津田、同書、p94より抜粋)

実地疫学(field epidemiology):医学における因果関係の推論方法
原因を突き止めるのに、原因暴露の推定値は邪魔にはならないが当初はなくても構わないのであり、ましてや当初から不完全な原因情報に頼り切りになってはいけない。(津田、同書、p98上段のカラム)

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科学の問題に絡むイデオロギー問題
たとえば100mSy閾値論のように、明らかに専門的情報とは著しく異なる危険とも言える情報が公に信じられていたら、それに気づいた専門家としては、「それは誤りです」と伝え、できるだけ正確に情報を伝えようと思うし、それがむしろ社会的にも倫理的にも妥当な態度だろう。(津田、同書、p99下段のカラム)

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補注: 昨年の3月12日付けの投稿「100ミリシーベルト以下なら安全か」を以下に再掲する。同じ「世界」からのメモ。

100ミリシーベルト以下なら安全か
大震災・原発事故から4年(3)

まさのあつこ 砕かれた「100ミリシーベルト以下は安全」神話ーーー福島の小児甲状腺がんの現実 特集 これが復興なのか 世界 2015年4月号 岩波書店 pp117〜125

安全神話「100ミリシーベルト以下は安全」として著者があげているのは以下の5項目:
1「100ミリシーベルト以下は安全」
2 100ミリシーベルト以下と推計されたから影響はない
3 潜伏期間は4〜5年
4 増加はスクリーニング効果
5「過剰診断」論

以下、引用:

なぜ、被曝線量の実測値データが1080人分しかないのか・・・2011年3月23日、原子力安全委員会は・・・原子力災害対策本部に対して、・・・子どもの甲状腺の外部線量の測定を命じた。そして・・・一歳児で「100ミリシーベルト相当」以下なら問題はない、それ以上なら放射線医学総合研究所などに問い合わせるよう指示した。・・・その直後の四月一日、原子力安全委員会と原子力災害対策本部は、・・・100ミリシーベルト相当「よりも低い値であることから追跡調査を実施しなくても問題はないと考えられる」などの理由で、測定を止めた。使えるとされたデータは三月二十四日から三十日の間に測定した飯舘村、川俣町、いわき市の1080人分だけとなった。・・・この間、誰も「100ミリシーベルト」の意味を質していない。・・・線量が高かったところでの測定はそもそも行われていない。高線量地域のデータは欠け、低線量地域の汚染は問題視されなかった。・・・福島県「県民健康調査」検討委員会でも環境省の専門家会議でも、今になって測定線量データの不足を嘆いている。(同書、p121-2)

以上、2015年3月12日付けの投稿を再掲。

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