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チェルノブイリ甲状腺癌の実態

2016年3月5日 土曜日 快晴

尾松亮 チェルノブイリ被災国の知見は生かされているか ロシア政府報告書から読み解く甲状腺癌の実態 世界(岩波書店)p101- 第八七九号 2016年3月

(チェルノブイリ原発事故二年目の)1987年には甲状腺癌検出件数が著しく増加し、169件に達した。・・これは、チェルノブイリ原発事故25周年に発行されたロシア政府報告書(2011年)の主要汚染地域における甲状腺癌に関する記述である。(尾松、同書、p101)

ロシア政府報告書には、日本でチェルノブイリ甲状腺癌についてしばしば語られることと、明確に食い違うデータが示されている。(尾松、同書、p101)

日本では・・チェルノブイリ甲状腺癌について「四から五年後に増加」「事故時五歳以下の層に増加」「100mSy超の内部被曝で増加」という点を強調してきた。そして、福島県で見つかった甲状腺癌との違いに焦点が当てられてきた。 ロシア政府報告書と照らし合わせると、このような説明が必ずしも妥当でないことがわかる。(尾松、同書、p106上段のカラム)

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1.甲状腺癌の増加時期: 二年目から増加し、四から五年後に大幅に増加した。
ーーー福島県で原発事故後三年目までの甲状腺癌は原発事故と無関係、という論拠にはならない。

2.年齢層: 事故直後数年のあいだは、「事故時五歳以下」の層に甲状腺癌増加はない。
ーーー「事故時五歳以下」の層に甲状腺癌が目立って増えるのは10年後のの彼らが10代半ばになる95年頃。事故直後数年間をみると、事故時10代後半の層に甲状腺癌が増えている。
ーーー福島県で、現在まで事故時五歳以下の層に甲状腺癌が増えていないとしても、そこだけを見ればチェルノブイリ甲状腺癌との違いよりも類似性が目立つ。

3.被曝量:比較的低い被曝線量の地域でも甲状腺癌が増加
ーーーロシアの被災地では、より低い被曝量が推定される地域でも甲状腺癌の増加が認められている。
ーーー福島県内の方が被曝量がずっと低いため甲状腺癌は増えないという考え方は、成り立たない。(尾松、同書、p103-105を抜粋引用)

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チェルノブイリ被災国の知見の再検証を要す
・・・それらの資料を人類の共有財として、被災当事者、支援者に伝えるのが専門家の責務であるはずだ。・・・ロシア語の資料で翻訳が公開されないのをよいことに、専門家が文脈を無視して一部を抜き出し、その見解を押しつけるなら、逆に信頼を失うだけだ。(尾松、同書、p106)

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