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行列とベクトルのはなし

2016年4月18日 月曜日 曇りときどき小雨

大村平 行列とベクトルのはなし 線形代数の基礎 改訂版 日科技連 2015年 (初版は1978年)

この本では、第1章以来、ベクトルや行列をなるべく具体的な例題を引き合いに出しながら解説してきたつもりですが、この章では、最後のだめ押しのつもりで、ベクトルや行列を幾何学と結びつけて、図形をこの目で確かめながら話を進めていこうと思います。(大村、同書、p194)

合点がいかないまま先へ進むのは数学がもっとも忌み嫌うところです。(大村、同書、199ページ)

けれども、3次元の場合になると形勢は逆転しました。描かれた幾何学的な図形は、懸命に想像力を働かせても理解しにくく、この図形からは容易に・・であるための条件を導き出すことができません。これに対して、前ページのように代数的な運算をすることで、僅か半ページで答えが得られてしまったのです。こうなると、ちょっとレベルの高い数学では、具体的なものばかりにしがみついているのは得策とは言えないようです。・・やはり、数学では抽象的であることを怖れていては大成の見込みがないようです。抽象度が高いほど広い応用範囲を持つのが普通なのですから。(大村、同書、p201)

位置ベクトルを活用すると三角形の重心などもスマートに求めることができます。・・ベクトルを使った平面幾何の証明は何とスマートなこと。(大村、同書、p205、p208)(補注2)

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補注:
高校生や線形代数再入門を志す社会人のための入門書として最適な本。とても丁寧に解説されている。この本で親しみを持った後に、もう少し詳しく練習問題の豊富な教科書、たとえば、
川久保勝夫 線形代数学 日本評論社 1999年
などへと読み進んでいくのがよいと思う。川久保さんの本は、私の「自信をもってオススメしたい本」である。この丁寧な教科書のおかげで、大学一年生以来、不得手という意識のあった線形代数学を「わかった」という気持ちになれたのである。

補注2:
ベクトルを使った平面幾何の証明: 基礎的で重要なところなので、昔、大学入試問題の作成を命じられた折には、好んでこの手の問題を作った思い出がある。

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