俯し仰ぐうちに宇宙を終う 樂しからずして復た何如

2016年6月16日 雨

一海知義 漢詩一日一首 平凡社 1976年

  讀山海經其一  陶淵明

  孟夏草木長  孟夏 草木長じ
  遶屋樹扶疏  屋を遶りて樹扶疏たり
  衆鳥欣有託  衆鳥は託する有るを欣び
  吾亦愛吾廬  吾も亦吾が廬を愛す
  既耕亦已種  既に耕しては亦た已に種ゑ
  時還讀我書  時に還りて我が書を讀む
  窮巷隔深轍  窮巷は深轍を隔て
  頗迴故人車  頗る故人の車を迴らす
  歡言酌春酒  歡言しては春酒を酌み
  摘我園中蔬  我が園中の蔬を摘む
  微雨從東來  微雨東より來り
  好風與之倶  好風之と倶にす
  汎覽周王傳  汎覽す周王の傳
  流觀山海圖  流觀す山海の圖
  俯仰終宇宙  俯仰して宇宙を終せば
  不樂復何如  樂しからずして復た何如

(原文と読み下しは、ウェブサイトhttp://tao.hix05.com/Sengai/sengai01intro.htmlより引用)

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  歡言して春酒を酌み
  我が園中の蔬を摘む
  微雨東より來り
  好風之と倶にす
  
  周王の傳を 汎(ひろ)く覽(よ)み
  山海の圖を 流し觀る
  俯(ふ)し仰ぐうちに 宇宙を終(お)う
  樂しからずして復た何如(いかん)

訓み下しは一海さん(同書、p200-201)

それらを「汎覽」「流觀」するというのは、いずれもゆったりとページをくりながら、あちこちながめること。 そんなとき、「俯仰」のうちに、頭をうつむけふりあおぐ瞬間のうちに、「宇宙」、無限の空間と無限の時間を、たちまちにしてひとめぐりする。 これがたのしくなくて、どうしようぞ。  平静穏和のうちに一生をおえたと見られる詩人陶淵明、だがその胸中には煮えたぎるエネルギーがあり、「山海経」への興味はその一つの証左である、とするのは、魯迅の説である。(一海、同書、p201-202)

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補注 山海経 ウィキペディアによると・・・
『山海経』(せんがいきょう、山海經、拼音: Shān Hăi Jīng)は、中国の地理書。中国古代の戦国時代から秦朝・漢代(前4世紀 – 3世紀頃)にかけて徐々に付加執筆されて成立したものと考えられており、最古の地理書(地誌)とされる。
『山海経』は今日的な地理書ではなく、古代中国人の伝説的地理認識を示すものであり、「奇書」扱いされている[1]。編者は禹およびその治水を助けた伯益であると序などにに仮託されているが、実際は多数の著者の手によるものと考えられる[2][1]。内容のほとんどは各地の動物、植物、鉱物などの産物を記すが、その中には空想的なものや妖怪、神々の記述も多く含まれ、そこに古い時代の中国各地の神話が伝えられていると考えられている。そのため、後世失われたものの多い中国神話の重要な基礎資料となっている。
もともとは絵地図に解説文の組み合わせで構成されており『山海図経』と呼ばれていたが、古い時代に既に絵地図も失われてしまっており現存もしていない。そのため、現在残されている画像は『山海経』本文にある文章から逆算された後世の想像によるものであり、伝来する系統によって全く違う画像となっているものも存在している。(以上、ウィキペディアからの引用終わり)

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補注 もし五柳先生が現在に生きておられたら・・・山海経に相当する現代の書物はどんなものなのか? <それらを「汎覽」「流觀」するというのは、いずれもゆったりとページをくりながら、あちこちながめること。 そんなとき、「俯仰」のうちに、頭をうつむけふりあおぐ瞬間のうちに、「宇宙」、無限の空間と無限の時間を、たちまちにしてひとめぐりする。>・・・地球や宇宙の歴史や紀行の書物・・・科学知識の豊かになった現在であればさしずめ・・・
マクロ宇宙とミクロ素粒子の現代物理学
地球の成り立ち(プレート、火山や海洋河川など)の地球学
発生や進化を含めて大きな流れの分子生物学と医学
・・・といったところだろうか。やや自然科学系に偏ってしまったかもしれない。五柳先生は人文系の本も大好きだろう。さまざまな時代の紀行文や地理書・いろいろな国に生きた人々の思想や伝記なども「汎覽」されるだろう。自然科学も含め、ジャンルを問わずにいずれもゆったりとページをくりながら、あちこちながめ、頭をうつむけふりあおぐ瞬間のうちに、「宇宙」、無限の空間と無限の時間を、たちまちにしてひとめぐりする、そんな読書の時を楽しまれることだろう。
 そんなふうに考えてみながら、五柳先生に倣って書物と親しみ、読書する時間を楽しんでゆきたいものだと思う。我がベッドサイドにはこのところずっと陶淵明(都留春雄・釜谷武志 鑑賞 中国の古典第13巻 角川書店 昭和63年)が転がっているのである(が、あまり深くは理解できていない)。

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