カビ図鑑 アナモルフとテレオモルフの関係

2016年10月27日 木曜日 曇り

細矢剛・出川洋介・勝本謙・(伊沢正名・写真) カビ図鑑 野外で探す微生物の不思議 全国農村教育協会 2010年

根田仁・(伊沢正名・写真) きのこ博士入門 たのしい自然観察 全国農村教育協会 2006年

国立科学博物館編/細矢剛・責任編集 菌類のふしぎ 第2版 国立科学博物館叢書9 東海大学出版部 2014年

**

補注 「カビ図鑑」は、菌類のこと・特に菌類の生物科学の知見を知る入門書としてピッタリである。簡潔に面白く書かれていて、読みやすい。私も夢中で一晩のうちに読み通してしまった。これを最初に通読し、その後で「菌類の不思議」へと読み進めてゆくのが良いと思う。(実をいうと、「菌類の不思議」は一昨年2014年に買って持っていたのだが、ようやく今頃になって通読できるようになったのである。「カビ図鑑」から入門していれば、ずいぶんと捗っていたと思う。先達はあらま欲しきかなである。
 一方、「きのこ博士入門」は、親子できのこ探索をするための入門書として読みやすい「きのこ図鑑」になっている。ただし、記述はきのこに重心を置いているので、やはり「カビ図鑑」を先に通読してから、必要に応じて「きのこ博士入門」を開いた方が理解が楽だと思う。ちなみに、写真は同じ伊沢さんの手によるもので、伊沢さんは記録としてのフィルム写真にこだわり、デジタルカメラは使わないとのこと(きのこ博士、入門、p150のコラム)。素晴らしい写真が多数載せられており、博物学的記録として、そして広い意味での私たちの文化として、価値が高い。

**

カビときのこの分かれ道
子嚢菌類の場合、子嚢は子嚢果の中にできるが、子嚢果の形や大きさは、菌によってさまざまである。この子嚢果が大型の場合は、「きのこ」と認識される。たとえばアミガサタケやチャワンタケがそうだ。 一方、子嚢果が肉眼で見えないくらい小さい場合は、「カビ」と認識される。きのことカビが同じ仲間であるにもかかわらず、しばしば別な生き物だと思われる分かれ道は、まずここにある。 なお、担子菌類の場合は担子器果という構造が、一般に「きのこ」と呼ばれている。(細矢ら、カビ図鑑、p29)

アナモルフとテレオモルフの関係
ひとつの菌が、有性生殖時代と無性生殖時代とで別な2種の菌だと認識されてしまうこともある。・・このとき無性生殖によって生活している姿をアナモルフといい、不完全菌類に分類される。有性生殖によって生活している姿をテレオモルフといい、子嚢菌類や担子菌類に分類される。つまり観察しているライフサイクルのステージによって、分類も代わり、テレオモルフがしばしば「きのこ」ととらえられ、アナモルフがしばしば「カビ」ととらえられる(微少な子嚢果や担子器果はカビととらえられることもある)。・・・(中略)・・・ そもそも「きのこ」とは「ある程度の菌糸が集合してできた、組織的に分化した、肉眼でも見える構造」を指すので、きっちりした定義があるわけではない。本書では、微少なテレオモルフをつくる菌についてもカビとして扱っている。(細矢ら、カビ図鑑、p29)

**

テレオモルフ・アナモルフのそれぞれに与えることが許された菌類の学名が(2011年のメルボルンでの命名規約の改訂により)1名(補注:ひとつの名前)とされることになったため、菌類の学名は大変な転換が必要となった。(菌類の不思議、第2版、まえがきvii)

補注:分子系統学的データを基にした分類への改訂により、菌類の分類は大きく転換しつつある。

**

補注 不完全菌 ウィキペディアによると・・・
不完全菌(ふかんぜんきん)とは、子のう菌・担子菌の仲間で、有性生殖を営むステージが未発見で分類学的な位置がよくわからないものを仮にまとめるということで成立した群である。菌類の無性生殖のみで増える体を不完全型、そのステージを不完全世代と呼んだが、この不完全型のみしか発見されていないことからこの名称で呼ばれた。有性生殖を行うステージを完全型、そのステージを完全世代と呼ぶが、通常これは同時に無性生殖も営む。身近に見ることのできるカビの大部分は不完全世代を目にしており、そこに不完全菌が含まれる率は高い。
菌類は通常の栄養生活を営む体が視覚的特長に乏しい菌糸体であり、生化学的手段をとらない限り、生殖器によらなければ同定は困難である。また既知の子のう菌や担子菌の不完全型と酷似していても、完全型が未知の近縁別種であったり、有性生殖能力を喪失した近縁種である可能性は棄却できない。そのため、完全型が発見されている菌であっても、得られた不完全型の菌を便宜上、不完全菌として扱うことが多い。・・・(中略)・・・
菌類の分類は、有性生殖や、減数分裂によってできる構造(完全世代と呼ぶ)を中心に行われるので、このように無性生殖ばかりを繰り返す(不完全世代と呼ぶ)菌は、正しい分類ができない。このことから、このような菌類を不完全菌と呼ぶようになった。不完全菌がそのような有性生殖などが見つかれば、正しい分類位置を定めることができる。その場合には、正しい学名がつけられる。しかし、完全世代が見つかるまでは名前が付かないでは困るので、不完全菌に対しても学名は与えられる。その場合、正しい類縁関係が反映されることは必ずしも期待できないので、形態に基づくものと割り切らざるを得なくなる。もちろん、完全世代が見つかり次第、正しい学名がつくわけだが、それでも実際に菌を見れば、やっぱり無性生殖ばかりで暮らしている訳なので、不完全菌としての名前も使って良いことになっている。ちなみに不完全菌の「属」は日本語では区別しないが、genusではなくform-genusである。形態にのみ基づく分類であるとの意味である。以上、ウィキペディアより引用終わり。

**

*****

********************************************