タケミナカタ神話と天武の信濃志向

2016年12月30日 金曜日 雪

吉野裕子全集 第3巻 陰陽五行思想からみた日本の祭り 人文書院 2007年

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・・そこでオホナムチの子としてタケミナカタが創出され、オホナムチの代理としてこの神を国土の中央、諏訪湖に鎮祭したのである。后土(こうど)は土神で中央に在り、しかも水土を支配する蛇神である。
 オホナムチの代理、タケミナカタは要するに后土に比定される神であって、タケミナカタが国土中央の山湖に鎮祭されることによって、大和朝廷の当事者達は、これによってはじめて日本国土の呪術的理想像は完成したと考えたのではなかろうか。(吉野、同書、p93)

史実と神話
 出雲を舞台とするオホナムチ神話を中国の天地合一思想に拠る神話の初版とすれば、後続の諏訪を舞台とするタケミナカタ神話は、陰陽五行の理解の進んだ時点における神話であって、いわば初版の改訂版である。
 諏訪神話が、「古事記」にのみ収められ、「日本書紀」からは除かれている理由は、多分、正史において初版が大事にされたからであろう。あるいはまた大和岩雄氏によって指摘されているように「古事記」の成立が和銅五年より後の時代であるならば、それだけ改訂版の方が重視されたということも考えられる。・・・(中略)・・・
 建御名方神の諏訪鎮座と、天武天皇の信濃志向は、互いに関連しあうものであって、別箇のこととして考察されるべきではない。・・水土を司る后土=タケミナカタ神の国土中央への鎮祭神話は、天武天皇晩年の信濃志向の史実に正に対応すると思うのである。(吉野、同書、p94)

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補註 后土 ウィキペディアによると・・・
后土(こうど)は、四御の唯一の女神であり、中国道教の最高位の全ての土地を統括する地母神。土地・陰陽と生育を司る墓所の守り神であり、主に女性や死は陰と位置づけられる事から、墓所の神は女性神となった。城隍神や土地爺と共に土地の守護神の一種に位置づけられていた。
「后土娘々」、「后土皇帝」、「承天效法后土皇地祇」、「無上虛空地母至尊」とも呼ばれる。
土地の神の中では唯一、女性神とされているが、これは中国の自然哲学「陰陽五行説」の考えに基づき、男女と生死はそれぞれ陽と陰に分けられるとされている。五行思想それぞれに神を配し五行を司る神であり、木の神は句芒・火の神は祝融・土の神は后土・金の神は蓐収・水の神は玄冥。方位を東西南北中央に分けるが、中央は土に通じるので、土の神でもあり、遥か昔に神農の後裔・黄帝を補佐したとされる。『瑤池記』に記載された后土は黄帝を助ける七天女の一人でもある。
本来は男性神であったが、後に地母神のイメージと混同されて女神と思われるようになった[1]。なお、「后」の字には王妃の他に男性の君主という意味もある。(以上、ウィキペディアより引用)

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