literature & arts

聊斎志異考 中国の妖怪談義

2017年1月25日 水曜日 雪

陳舜臣 「聊斎志異考 中国の妖怪談義」ものがたり水滸伝 陳舜臣中国ライブラリー16 集英社 2000年(オリジナルは初出誌は「小説中央公論」1993年1月号から1994年1月号、初刊本は「聊斎志異考 中国の妖怪談義」中央公論社 1994年)

(当サイト2016年12月13日の記事「狐は妖獣・霊獣・仁獣 たいてい美女に化ける」の続き)

彼の母親は、夢に、
ーーーこの児は公主に尚(しょう)するであろう。
 と告げられ、・・(陳舜臣、同書、雲蘿公主、p584)

語意メモ 公主 長公主
 「公主」とは天子の娘、すなわち内親王のことにほかならない。古代、天子は我が娘の結婚をみずから主宰することはなかった。周代にあっては、天子と同姓の諸侯、秦漢以後は三公(さんこう;大司馬、大司徒、大司空)がつかさどった。公が主宰するというので、天子の娘を「公主」というようになったちなみに、天子の姉妹は「長公主」と呼ばれたのである。
 天子の娘をめとるときは、「娶」といわずに、「尚」といった。
・・・(中略)・・・
 「これは聖后府(せいこうふ)の雲蘿公主(うんらこうしゅ)でございます。・・」
 聖后府(せいこうふ)とは、天上の聖母の宮殿のことである。「后」は「君」とおなじ意味にも用いられる字だが、古い母系時代とつながりをもつようだ。中国で最も神聖な山とされている泰山にも、女神が祀られ、「泰山娘娘(ニャンニャン)」と呼ばれる。聖后府は天上にあるので、そこの公主も「雲の蘿(蘿、つた)」と名づけられたのだ。(陳舜臣、同書、p585)

**

語意メモ 鬼神
 もともと「鬼」は祖霊も含む人間の霊であり、「神」は自然神であった。それがいつのまにか混同され、鬼も神も、きわめて現実世界に近いものになった。(陳舜臣、同書、神女、p597)

**

語意メモ 僑
 「僑」は「かりずまい」のことで、僑居とか僑寓(きょうぐう)ということばがあり、外国にかりずまいする中国人を「華僑」という。その土地に根をおろした人もいるので、近ごろは「華人」と呼ぶことが多い。(陳舜臣、同書、神女、p599)

**

 「聊斎志異」に評をつけた何守奇(かしゅき)は、
 ーーー女は神であったというのに、どうして死ぬことができたのか?
 と疑問を呈している。
 こんなことに疑問を呈しているようでは、「聊斎志異」はたのしく読めないであろう。あるいはこんな点を、いちいちかぞえあげるのが、「聊斎志異」を読むたのしみの一つかもしれない。(陳舜臣、同書、神女、p608)

**

*****

********************************************

RELATED POST