literature & arts

モームとの仮想対談

2017年3月12日 日曜日 晴れ

行方昭夫 モームの謎 岩波現代文庫(文芸218) 2013年(本書は岩波現代文庫のための書き下ろし)

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モームと行方さんとの仮想対談:

モーム: 仏様の顔を見ると心が癒されるね。(1959年・モーム85歳の日本訪問の)帰路ではタイとともに、ぜひまた訪ねたいと願っていた、カンボジアのアンコールワット遺跡にも行けた。あそこでは、巨大な石の仏像が何体もあり、拝むことができた。あそこは死ぬ前にどうしても再訪したいという思いがなぜか強かった。あの時行けて本当にありがたかった。
行方: そういえば、九〇歳のお誕生日のインタビューで、八八歳の時にももう一度訪ね、三週間も滞在したと語っていますね。本来、あなたは名所旧跡、文化遺産には興味なく、もっぱら土地の人を観察するのが好きだと、書いていますね。アンコールワットは例外でしょうか。
モーム: そうなんだ。あそこは例外だな。最初訪ねた昔は、ジャングルの中を非常に苦労して時間をかけて着いたのだが、今はずっと行きやすくなった。あそこには魅了される。(行方、同書、p238)

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行方: 皮肉屋というと、自分は高いところにいて、したり顔で人を見下したり、からかったりするようですが、あなたは明白に違います。いつだって、自分も他人も誰も彼も弱い人間だ、という確信が前提にあるのですから。最初の引用の判事の場合だって、自分も裁かれる被告になりうるという理解があれば、取り澄ました偉そうな顔はしないでしょう。(行方、同書、p251)

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