literature & arts

ディケンズ ドンビー父子(1)

2017年4月14日 金曜日 曇り

ディケンズ ドンビー父子 田辺洋子訳 東京こびあん書房 2000年

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補註 バルザックの「人間喜劇」の訳本は15巻ほどもあり、中央図書館にもHs大学図書館にも並べられている。最後の2巻は事典と「あらすじ集」に当てられている。バルザック本のあらすじーーーこれは「あらすじ」とはいえ、相当に長い。読んでみると確かに詳しいあらすじでないと役立たない訳がわかる。
 一方、ディケンズ本に関しては、あらすじ集といったものはかなり簡略でもよさそうである。バルザック本ほどの筋の展開とトリックの複雑さは見られない。ある意味、安心して読み進められるのがディケンズ本の良いところであろう。同時に、ディケンズ本を読んで物足りないと感じる人(10年前の私はまさにそうだったのだが)には、それが物足りない理由にもなろう。
 今日から読み始めた「ドンビー父子」は、前回の「ハード・タイムズ」の4倍はありそうな、巨大な本である。図書館で借りてきているので、2週間で読み終えなければならない。去る4月8日に原書を注文してあるが、それが届くのはこの訳本を読み終えた後になるかもしれない。

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2017年4月19日 水曜日 雨

「ギルスよ!」と船長(=ネッド・カトル船長)は裏の茶の間に駆け込み、彼の手を実に優しく取りながら言った。「舳先をしっかり風上に向けんかい。ならわしら、何とかしのげるて。お前さんはな、ただ」と船長はおよそ人智の探り得たもっとも貴重にして実際的な教義を説く者の厳粛さで。「舳先をしっかり風上へ向けておくだけのことよの。ならわしら、何とかしのげるて!」
 ソルじいさん(=ウォルター少年の伯父のソロモン・ギルズ老人)は彼(=船長)の手をそっと握り返し、礼を述べた。(同書、田辺洋子訳、上巻、p152-153)

どうかこういう時こそ舳先をしっかり風上に向けられますようとの伝言を托し(同書、上巻17章、p274)

補註 「舳先をしっかり風上へ向けておく」・・数日前の私なら意味不明の訳語であるが、「宝島」の船長の言葉を銘記しているため、この船長言葉はきっと lay to! と英訳するのだと思うのである。もちろん、アクセントは to の上にある。 lay は自動詞である・・ You may lay to that! (この海賊言葉の場合のアクセントはもちろん lay の上である)。

さらに補註
和西海洋辞典・辞書 Japanese-Spanish Ocean Dictionary, diccionario …
www.oceandictionary.jp/jjss/js-abc/jstsu.html によると・・
[海][帆を]詰め開きの [風上への帆走]、一杯開きの、クロースホールド、adv.詰め開き … /ceñir: [他動][海][船を風上に]ラフさせる、[船を]風上に向ける、[舵を]船首が風上に向くように取る、詰め開きで帆走する[英語: to luff, to sail close hauled].

「しかし、時にはお客様のために、風上に舳先を 向けて(困難な手段を選んで)走らなければいけないこともあります」・・などという使い方の場合であれば、 lay to (風上に向けて停泊)ではなくて、[舵を]船首が風上に向くように取る、詰め開きで帆走する[英語: to luff, to sail close hauled] というような英語になりそうである。詳細は、原書が届いてからこの上巻第9章の原文に到達した折りに再考察したい。

close-hauled の意味 ウェブ辞書によると・・
having the sails trimmed for sailing as close to the wind as possible
(帆船が)帆を詰め開きにした,いっぱい開きの

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これで何もかもしまいにすりゃええんじゃ。(同書、p155)

補註 この本の訳者の田辺氏は広島生まれで広島経済大学教授とある。彼女の訳は、ロンドンっ子たちの会話が、東京弁ではないのである。それが何弁か分からないのであるが、それでも岡山出身の私にはどことなく「ようわかる」ので不思議である。ひょっとして広島弁のバイアスがかかった訳語になっているのかもしれない。「それもよか(九州弁?)」とも思うのである。岡山・広島弁なら、「それでもええんじゃ」と思えばよいのである。

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補註 フローレンスとポール姉弟がドンビー氏によって送られることになる、ピプチン女史の住むブライトンという海辺の街は? ウィキペディアによると・・・
ブライトン(Brighton)は、イギリスのイングランド南東部に位置する都市。行政上はイースト・サセックス州ブライトン・アンド・ホヴに所属する。
知名度・規模ともにイギリス有数の海浜リゾートである。観光都市であることから、ホテルやレストラン、エンターテインメント施設が多数あり、これらの施設を活かしたビジネスカンファレンスなども頻繁に開催されている。このほかの側面として、大学や語学学校をはじめとする教育施設が多い。このため学生が多く、パブやナイトクラブが多数あり、パーティ・タウンとしても有名である。<以上、ウィキペディアより引用終わり>

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補註 半島戦争(同書、p162)1808年 – 1814年 ウィキペディアによると・・・
半島戦争(はんとうせんそう、1808年 – 1814年、英: Peninsular War(半島戦争)、西: Guerra de la Independencia Española(スペイン独立戦争)、葡: Guerra Peninsular(半島戦争)、仏: Guerre d’Espagne(スペイン戦争)、カタルーニャ語: Guerra del Francès(フランス戦争))は、ナポレオン戦争中イベリア半島でスペイン軍、ポルトガル軍、イギリス軍の連合軍とフランス帝国軍との間に戦われた戦争である。日本ではスペイン独立戦争またはスペイン反乱としても知られている。この戦争は「ハンマーと金敷」の役に擬えられている。すなわち「ハンマー」とはアーサー・ウェルズリーに率いられた4万から8万の軍勢からなる英葡軍であり、それによって金敷であるスペインの軍とゲリラとポルトガルの民兵軍の上でフランス軍が打ちのめされたのである。<以上、ウィキペディアより引用終わり>

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