ディケンズ オリバー・ツイスト

2017年6月19日 月曜日

チャールズ・ディケンズ オリバー・ツイスト(上・下) 中村能三(なかむらよしみ)訳 新潮文庫 昭和30年(1955年)

Charles Dickens, Oliver Twist, Penguin Classics, 2002 (First published 1837-8)

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 医者は死骸の方へ身をかがめて、左の手を持ちあげた。「よくあるやつだ」と彼は首をふりながら云った。「結婚指輪はないよ。じゃ、おやすみ」
 医者は食事をしに帰って行った。そして婆さんは・・赤ん坊に着物をきせはじめた。
 オリバー・ツイストは、着物というものの力を示す、絶好の実例であった。それまで、彼は毛布だけにくるまれていたのだが、それを見ると、貴族の子供といってもいいし、乞食の子供といってもよかった。・・ところが今、同じことにたびたび使われて、黄色くなった、キャラコの古着を着せられると、オリバーははっきり烙印をおされ、たちまちにして、本来の地位ーー教区保護の子供ーー救貧院の孤児ーーいやしい、いつも空き腹をかかえている苦役者ーーどこへ行っても打たれ蹴られーーみんなから蔑まれ、誰からも不憫をかけてもらえないーーへと落ちてしまったのである。(同訳書、上・p9-10)

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・・ぼくは今、騒々しい群衆の中での出世とか、悪意と誹謗の世界での生活、ほんとはすこしも不名誉でも恥辱でもないことで、正直な人間が頬をあからめねばならぬような世界での生活など捧げるのではなくて、ただ家庭ーー真心と家庭ーーそうだ、いとしいローズ、この二つ、この二つだけが、ぼくの捧げ得るすべてです。」(同訳書、下・p354-5)

補註 2017年6月29日・木曜日
「オリバー・ツイスト」読了。ディケンズの小説としては比較的短い、飜訳の文庫本で7-800ページほどの長さの小説である。ストーリーとプロットに少し古さ(出来過ぎている感)を感じるものの、ディケンズらしさがすでに満開で、これが彼の26歳の時の作品かと、その才能に驚かされる。

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