ディケンズ 我らが共通の友

2017年6月8日 木曜日 雨のち曇り(晴れ間と陽射しもあり)

C.ディケンズ 我らが共通の友(上) 間二郎訳 ちくま文庫 1997年(原作は1864-65年)

「ばかげた気分になってるんだよ」ユージンが言った。「僕はばかげた男なんだ。何から何までばかげてる。さ、行こうぜ!」
 ライトウッドの心を、友人(補註:=ユージン、駄洒落ではないはず)の身にある種の変化がここ半時間ほどの間に起こっている、という思いがよぎった。彼のもっとも突飛な、なげやりな、無鉄砲な面を増幅した、とでも言うしかないような変化が・・・。日頃のユージンにはすっかり慣れっこのはずなんだが、今の彼には何かこれまでにない不自然なところがある・・・、ライトウッドはそう思って一瞬とまどいを覚えた。その思いは彼の心をふっとよぎって、すぐに消えて行った。だがそれを、彼は後になって思い出したのだった。
「ほら、あの家だよ、娘が座ってまってるのは」吠え猛る風にさらされて土手の下に立った時、ユージンが言った。「あの明かりは火鉢の火なんだがね」(同訳書、p326-327)

補註: ユージンはどことなく「二都物語」のシドニー・カートンを思い起こさせる人物であるが、長い小説は始まったばかりで、この人物がどのように描かれるか、今はわからない。E.M.フォースターによる「扁平人物」と「円球人物」という表現分けの視点からは、ディケンズ本の登場人物の多くは扁平キャラクターであるが、ユージンの身に起こっているある種の変化が、ユージンを円球人物にしていくのか、あるいは扁平にとどまってしまうのか、読み進めていくうちに明らかになるのかもしれない。

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