biography

反逆者(Rebel)トルストイ

2016年7月29日 金曜日 朝から降り続く強い雨

武藤洋二 紅葉する老年 旅人木喰から家出人トルストイまで みすず書房 2015年

死ぬまで反逆者(Rebel)であり続けたトルストイ

トルストイは一つの輪である。それは小さな玉のつらなりである。それぞれの玉は、反権力、非暴力、土地私有反対、不戦反戦等々の立場をになっている。それらはたがいに補いあうと同時に衝突し両立しない場合がある。・・・(中略)・・・宗教的安心、仏教の悟りに近いものを最終期のトルストイに見ようとするのは、死ぬまで反逆者であり続けた者を、安らかな死に場所を求めて家を出たありきたりの高齢者にしてしまう。  トルストイの輪は死ぬまで振動し、うわごとの中でも輪が作動している。(同書、p240)  トルストイの土地私有反対を権力否定と切り離せば、彼が長年主張し続けた自由、寛容、国家への服従拒否、処刑と暴力と強制の廃止などは消えてしまい、土地私有制廃止が土地国有制という鬼子、絶対的権力支配を生みだす。処刑、暴力、強制、国家権力の否定否認のこのつらなり、この輪の中でこそトルストイの土地私有反対が意味をもつ。(同書、p242)

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家出はソフィアの存在が原因ではなく、トルストイ内部の政治的決着である。この激変なしにはトルストイの言動の体系は「言葉、言葉、言葉」(ハムレット)になって空中分解する。政治的破綻のふちで、ソフィヤはトルストイに家出決行のきっかけを与えてくれた。(武藤、同書、p251)

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人生の紅葉期こそ陽気さが必要である。しかし、醜、弱、衰ぬきの紅葉期は非自然の作り話である。だから小さな本書にも、陽光が照っている所もあれば鬼火が燃えているところもある。ただ地底に陽気さが満ちていればいい。(武藤、同書、p259)

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