literature & arts

Dickens, Great Expectations (2)

2017年3月7日 火曜日 曇りときどき陽射し

風邪を引いてしまい、家に籠もって養生している。

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Charles Dickens, Great Expectations, 1860-1861; Penguin Classics, 1996, 2003.

ディケンズ 大いなる遺産 石塚裕子訳 岩波文庫 赤229-9、229-10 2014年

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I went so far as to see the Avenger by his blue collar and shake him off his feet, — for presuming to suppose that we wanted a roll. (ibid, p275)

ぼくはついかっとなって仕返し小僧の制服の青い襟をひっつかんで、地に足がつかないほど揺すぶってやった・・・というのも、ぼくたちにはロール・パンぐらいあれば、ほかには何もいらないんだ、と小僧は僭越にも思いこんでいたからだった。(石塚訳、下巻、p44)

補註 「to suppose that we wanted a roll」を、どう解してよいかわからない。ピップが従者(the Avenger)に八つ当たりしていじめる場面である。朝食の時であるから、a roll というのはロールパンかも知れないけれど、唐突に、a roll と言われても脈絡がなくて戸惑う。従者が日頃どのように朝食の準備をしているかという記載がでてきた後であればピンとくるのかも知れないが。慣用句かとも疑い、勝俣・活用英和を調べてみるが、思い当たる表現は見つからなかった。
 望ましくない脅迫の手紙が舞い込んできて主人のピップがむかっ腹を立てているときに、たまたま従者の少年が朝食のロールパンをサーブしようとしたので、少年に向かって激しく八つ当たりした、という状況把握が素直そうだ。つまり、借金がかさんできて、朝食の時に必要なのはロールパンではなくて、お金なのだ! と、従者に理不尽に八つ当たりしている、と解したい。当時の児童労働の過酷さの一端が表現されている。
 ・・というように解すると、最初トンチンカンに思われたが、石塚訳でぴったり正解のようだ。
 ディケンズの表現にはしばしばこんな唐突が出てくるので、戸惑う。

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