蒲葵(ビロウ;沖縄ではクバ)が扇の起源 

2016年12月11日 日曜日 雪

夕方になっても雪が降り止まず、ますます積もる。ただし、高速道路は流れている。

**

吉野裕子全集 第1巻 扇/祭りの原理

蛇と陰陽五行の二つを柱として歳時習俗のみならず日本そのものを推理し続けて来た。此度、発刊するのはこの三十余年に及ぶ仕事の全てである。(吉野裕子、全集刊行に寄せて、より抜粋)

**

吉野裕子 吉野裕子全集 第1巻 扇/祭りの原理 人文書院 2007年(オリジナルは、扇の初刊が1970年、祭りの原理が1972年)

**

青島から沖縄へ

 青島へ出かけて行ったわけは、この蒲葵(ビロウ)が扇の起源であろうと推測していたからである。 なぜ蒲葵(ビロウ)が扇の起源と推測されたのか。・・一口にいえば出雲の美保神社に古く伝わるお祭り、蒼柴垣(あおふしがき)神事に重用される「長形(ちょうけい)の扇」が蒲葵(ビロウ)そっくりだったからである。(吉野、同書、p18)

蒲葵(ビロウ)が男根の象徴ではないか
 私は本土から持ちつづけてきた推測を打ちあけた。蒲葵(ビロウ)が男根の象徴ではないか、ということである。
 現地のことは現地の人にきくに限る。他所者には想像もつかない禁忌とか、習慣感情などから樹木をソンナことに見立てることは絶対にあり得ない、といわれるかも知れないのである。現地の人に問い質し、肯定されないまでも否定されないのでなくては、せっかくたてた仮説でも引っ込めなければならない。
 私は固唾をのんで先生(新垣翁)の返答をまった。先生はややしばらくして、
「そうかもしれないよ」
とゆっくり答えて、うなずかれた。(吉野、同書、p25)

**

御嶽(うたき)のつくりは結局女人のそれを象っている。(吉野、同書、p31)

**

補註 御嶽(うたき)
御嶽(うたき)とは・・沖縄人の信仰の対象となる、日本内地の神社のようなところである。(吉野、同書、p25)

**

補註 つしたま ズズダマ (吉野、同書、p26)
cf.「海上の道」http://www.aozora.gr.jp/cards/001566/files/54331_53583.html(青空文庫)
「宝貝のこと」「人とズズダマ」の三論考(柳田)
「ズズダマ」はふつう「ジュズダマ」と呼ばれることの多いイネ科の植物で、学名は Coix lacryma Jobi、すなわち「ヨブの涙」である。実を乾燥させて、まんなかに糸を通し、じゅずのようにして遊ぶ。その栽培種が「ハトムギ」で、昔からお茶やシリアル食品として用いられる。ヨクイニンという生薬は、ジュズダマの皮を粉にしたもの。

補註 ビロウ ウィキペディアによると・・・
ビロウ(Livistona chinensis、蒲葵、枇榔、檳榔)はヤシ科の常緑高木。漢名は蒲葵、別名ホキ(蒲葵の音)、クバ(沖縄)など。古名はアヂマサ。
ビロウの名はビンロウ(檳榔)と混同されたものと思われるが、ビンロウとは別種である。葉は掌状に広がる。ワシントンヤシにも似るが、葉先が細かく裂けて垂れ下がるのが特徴である。東アジアの亜熱帯(中国南部、台湾、南西諸島、九州と四国南部)の海岸付近に自生し、北限は福岡県宗像市の沖ノ島。
古代天皇制においては松竹梅よりも、何よりも神聖視された植物で、公卿(上級貴族)に許された檳榔毛(びろうげ)の車の屋根材にも用いられた。天皇の代替わり式の性質を持つ大嘗祭においては現在でも天皇が禊を行う百子帳(ひゃくしちょう)の屋根材として用いられている。民俗学の折口信夫はビロウに扇の原型を見ており、その文化的意味は大きい。扇は風に関する呪具(magic tool)であったからである。
参考文献 吉野裕子 『扇―性と古代信仰―』 人文書院、1984年。のち、講談社学術文庫。(以上、ウィキペディアより引用)

***

補註 ジュンク堂書店に寄って、・・ついに吉野裕子全集の第1巻を買ってきてしまった。
 このウェブサイトでも、吉野氏に敬意を込めて、カテゴリーに「民俗学」を新たに加えることにした。英語だと folklore 民俗学者は a folklorist と言えばよいのだろうが、やはり、吉野氏には「民俗学」の方が相応しいように思い、日本語のカテゴリーとして表記した。
 ところで、巻末の略歴によると、吉野氏は1977年3月に東京教育大学から学位を授与される、とある。1977年というと、教育大のほぼ最後の頃ではなかろうか。私の大学受験は1975年であるが、この頃が筑波大の医学部と体育学部などの一期生か二期生の入学試験が行われたはずである。ウィキペディアによると・・・1973年10月に筑波大学が開学。1978年(昭和53年)東京教育大学が閉学、とある。・・詳細は存じ上げないが、ともかく、教育大の歴史の最後辺りを飾る優れた博士論文のひとつであったことだろう。

**

*****

********************************************