agriculture

土壌を耕すのは土壌生物を生かすためだ

2015年7月29日 水曜日 曇り

エアハルト・ヘニッヒ 生きている土壌:腐食と熟土の生成と働き 中村英司訳 日本有機農業研究会発行 農山漁村文化協会発売 2009年(原著は2002年の第4版)

土壌を組織的に生物の豊富な熟土にすることができた時、そして巨大でエネルギーを浪費する機械を使うことを控え、土を反転させない道具を導入することができたなら、いつの日か、高馬力で重いトラクターなどを追放することができるようになるだろう。土壌を耕す技術は、土壌の中の小型生物、とりわけ微生物の生活環境をそれぞれの土層で良好にし、また保護するための技術であることをはっきりと認識するべきだ。・・・(中略)・・・熟土の破壊は、間作として緑肥を栽培することによって大幅に抑制することができる。緑肥植物の葉におおわれて、良い熟土状態が再びできあがり、ここにいわゆる遮蔽熟土が発達してくる。こんな方法、つまり畑を決して植物のないむき出しの状態にせず、「常緑」にしておくことは熟土構造を保つのに一番よい方法である。(同書、p110)

次のような対応によって、熟土の減少は食い止められ、熟土は再生する。
ーーー(農作業の技術上の課題としては)団粒構造の硬化に対して、機械的に割れ目をつくってやると、これにより下層土との結びつきが開けてくる。
ーーー生物的な課題としては、硬くなっている土壌をふたたび生物体で満たし、熟土形成を可能にすることである。この課題は植物が受け持つことになる。土壌にすばやく根を張らせ、根系を十分に伸ばさせるようにすることである。
 植物の根が絶え間なく伸長し、その生命機能が充実したあと、根毛は次々と死んで微生物の食べ物となり、熟土の形成が再開されるだろう。(同書、p108)

有機物で地表をマルチすることは、熟土形成を最適な状態にしてくれるだろう。その意味では、
ーー表土をおおうことは直射日光から微生物の発育を守り、最適な細胞熟土を保護する。
ーー地表を植物でおおうことは地表からの水分の蒸発をおさえ、それによって熟土化の均一な進行を助ける。
ーー地表のマルチは土壌の小型動物の活動を促進し、細胞熟土の生成を促す。
ーー有機物による地表マルチは土壌生物のための養分を継続的に提供するので、栄養マルチということができる。
とりまとめて言えば、有機物や植物による地表のマルチは、農耕の諸問題の多くを解決してくれる。土壌を生きたものとみなす者にとっては、マルチの中に農業での正しい手段を見出すことになる。(同書、p111)

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