culture & history

貧窮と苦悩のうちにとじこめられた孔子の前半生

2015年12月21日 月曜日 曇り

「白川静 孔子伝 中公文庫 1991年 オリジナルは1972年の中公叢書」

孔子の世系についての「史記」などにしるす物語はすべて虚構である。孔子はおそらく、名もない巫女の子として、早く孤児となり、卑賤のうちに成長したのであろう。そしてそのことが、人間についてはじめて深い凝視を寄せたこの偉大な哲人を生みだしたのであろう。思想は富貴の身分から生まれるものではない。・・・搾取と支配の生活は、あらゆる退廃をもたらすにすぎない。貧賤こそ、偉大な精神を生む土壌であった。(白川、同書、p26)

しかし人は、必要なときにだけ舞台にあらわれることが望ましい。日記まで読まれるような生活は、どうにも高尚なものとはいいがたい。ソクラテスが一ソフィストとして、アリストファネスの喜劇に姿をあらわすのは、ソクラテスにとってあまりよいことではなかったようである。私には、孔子の前半生を、貧窮と苦悩のうちにとじこめておくのが、最もよいように思われる。そしておそらく、それは事実であろう。(白川、同書、p27)

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