ももづたふ磐余の池に鳴く鴨を今日のみ見てや雲隠りなむ

2016年3月15日 火曜日 晴れ

小林惠子 西域から来た皇女 本当は怖ろしい万葉集2 祥伝社 2005年

四一六 ももづたふ 磐余の 池に 鳴く鴨を 今日(けふ)のみ見てや 雲隠(がく)りなむ

大津皇子の歌で最も重要なのは鴨を歌っていることである。・・大津皇子は鴨に三通りの意味を内在させているのだ。
1)中国では鴨の発音、「おう」は「押」、つまり花押(かおう)に通じることから、鴨は詔勅を出す時の皇帝の玉璽の韻語。ここで大津皇子は玉璽の持ち主、天皇だったことを暗示。
2)鴨の色を青色として自らを天武朝の後継者に任じている。天武天皇は五行思想でいえば青龍、つまり青色の人。
3)青色の鴨から青い鳥を暗示。 青い鳥は西方の崑崙山に住む西王母の使い鳥(山海経・西山経他)。西王母とは、メソポタミアのイナンナやペルシアのアナーヒーター女神に源があるとみられている中国の女神である。
大津皇子は鴨で青い鳥を暗示し、さらに西王母に比すべき佳人に仮託して、別れを惜しんだ。それがこの歌なのである。 大津皇子の涙は権力の座から引き摺り下ろされる悔しさ、屈辱、後悔、死への恐怖もあっただろう。それらを含めて大津皇子は恋人と今生の別れを惜しんで涙したと私は思っている。(小林惠子、同書、p32-35より抄録)

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