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統計力学

2016年7月11日 月曜日 雨のち曇り

都筑卓司 なっとくする統計力学 講談社 1993年

エントロピーとして S = klogW と定義。これをボルツマンの式という。熱力学での定義 ⊿S = ⊿Q/T と、一見全く違うようにみえるが、その実全く等しく取り扱えるものであり、古典的に定められたエントロピーが、「場合の数:W」というややこしい、個数の膨大なものによって定義し直されたことは、驚嘆に値するのである。(都筑、同書、p51より抄)

Wは場合の数。ドイツ語の Wahrscheinlichkeit の頭文字。哲学では蓋然性、数学では確率。(都筑、同書、p48)

統計力学では  S = klogW  の式を出発点としている。古典熱力学では、系全体の圧力とかエネルギーとか、それらの変化とかを考えたが、統計力学では多数分子・原子あるいは電子のさまざまなケースにおける場合の数Wを、なんとかうまく計算してやるのが命題になる。 最終的には、たとえば状態方程式 f(T,p,V) = 0 に到達して、これを実験結果と比べて良否を問うことになるのであるが、そこに至る道程は、統計力学は古典熱力学とは全く違う。まず系は莫大な数の小粒子であることを認識し(つまりミクロな物理学である)、それら多数が寄ってたかってつくりだす現象、という立場で対象物を調べるのである。(同書、p52)

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ボルツマン因子 exp(-βE)
ボルツマン因子は、Eなるエネルギーの状態に粒子が存在する確率の割合(これを相対確率という)。(同書、p66)

1/kT = β とおき、ボルツマン因子は exp(-E/kT)

温度そのものを見直してみる
exp(-E/kT)
温度が決まっていれば、この関数はEの大きいほど小さい。つまり高いエネルギー準位には、少ない粒子しか昇り得ないことを意味する。ところが温度が高い系では、かなりエネルギーの高い準位にまで、粒子が昇っている。温度が高い、つまり系のエネルギーが全体に大きいときには、高準位にもどんどん粒子は入っていくことになる。図(2.10、同書、p69)でわかるように低温度では粒子は低い場所に、高温では高い位置にまで占有する。むしろ図の曲線こそ「温度の定義」と考えてもいい。・・もっとも統計力学的な内容として登場したのが、図(2.10)である。準位に対する分布こそが温度を表す、といえる。下に厚い場合は冷たく、上部にまで粒子が分布していれば熱いのである。(都筑、同書、p69-70)

exp(-E/kT) は、エネルギーがEである準位に、粒子が存在する確率である。・・exp(-E/kT) は、ウェイトなのである。相対確率なのである。・・統計力学の主要な目的の1つは、物理量の平均値を導き出すことであり、ボルツマン因子は計算におけるウェイトとして、極めて重要なのである。(同書、p75-76)

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