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電流と磁場の関係は「鏡に映すと正しくなくなる」

2016年7月15日 金曜日 晴れ

西野友年 ゼロから学ぶ電磁気学 講談社 2007年

補注 前回紹介した「なっとくする電磁気学」は、なんとか最後のページまで読み進めはしたものの、現在の私にとっては(少しではなく)大いにレベルが高すぎた。電磁気学に関しては高校物理で習って以来、まったく学習を進められなかったことに、今さらながら気づかされたのである。

また、前回、(ゼロから学ぶ)ベクトル解析の勉強をしてみて、この数学を用いて電磁気学の問題を便利に解くことができるようになるのだけれど、肝腎の電磁気学の知識がゼロでは理解も半ば(実際はほとんどゼロ)で情けない。そこで今回は、「なっとくする電磁気学」の弟分に当たる「ゼロから学ぶ電磁気学」へ取り組むことになったのである。

西野さんの本シリーズ3冊目。確かに、最初のところからわかりやすく書かれていてありがたい。

なお、いままで「ゼロから学ぶ」シリーズは最寄りの大学図書館からお借りして読んでいたのであるが、今回、西野さんの「ベクトル解析」そしてこの「電磁気学」とは自前で購入しても読むこととした。(ベクトル解析本は、借りた西野本を先に通読してしまい、注文したものはまだ届いていないので、2回目の通読の時まで安置しておく次第となった。幸か不幸か、1回目の通読では足りないことを自覚して終えている。)

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電荷1クーロンあたりの「電気的な位置エネルギー」が電位なのだ。(p54)

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ガウスの法則
ベクトル解析を学んだことがあれば、こうして和で表すよりも、・・右辺の「局面σ上」での面積分が左辺の「囲まれた領域V」での体積積分と等しい、と整理した形で表した方が頭に入りやすいかも知れない。(西野、同書、p46)

アンペールの法則
大学でベクトル解析を習った人ならば、アンペールの法則は曲線Cに沿った「線積分」で表しておく方が理解しやすいだろう。(西野、同書、p95)

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自然界における右と左: 電流と磁場の関係は「鏡に映すと正しくなくなる」
どうして、自然の法則がこのように「右と左」を区別しているのか、その理由を掘り下げて行くと「物理学最前線の謎」(補注@)へと行きつく。(西野、同書、p96) 電磁気学については、相対性理論まで行き着くと一応の決着がつく。ちょっと経路が違うけれども素粒子の世界には「パリティの破れ」(補注#)という物理学史上重要な発見もある。生物学にも「心臓はどうして左側にあるの?」という左右の非対称についての有名な問題がある。(西野、同書、p96脚注)(補注*)

補注* 私は、ラングマン人体発生学を教科書にして3年間ほど大学で発生学の講義を担当していた。そこで「左と右」に関しても概略教えていたのである。
 人体発生における「左と右」が作られるメカニズムについては、現在ではかなり詳しくわかってきている。繊毛組織の回転渦巻運動の流れで発生分化を支配するサイトカイン分子に一定の濃度勾配を生じさせることにより左右が決まってくる(砂が敷かれた寺院の庭を決まった方向に竹箒で掃き清め続けるイメージである)。その回転運動が制御された一方向の回転であることがそもそもの始まりである。それをさらに進化の原始に遡れば、原核微生物の運動を掌る分子の回転方向に源がある。原始の単細胞が繊毛運動を獲得したとき、回転方向が自ずと決まったのである。それが偶然か必然か(地球の生物のアミノ酸がL体であることから由来するギブス・エネルギー的に必然的なタンパク質の構造によるものなのか、あるいはどちらでもエネルギー的には同等であったけれど偶然にも最初に採用された方向性構造がそのまま数十億年踏襲されたのか)、それに関して(おそらくすでにわかっていると思うが)現在の私は不勉強で答えられない。

補注# パリティに関しては、大村平さんの「情報数学のはなし」に紹介されていた。素粒子の「パリティの破れ」に関しては未勉強、今後どこかで遭遇するだろう。

補注@ 「物理学最前線の謎」・・M理論などの数理科学の世界だろうか。難しいだろうが、もう少し勉強を進めて、できれば垣間見てみたいものだと思う。

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