まわりにアカシアが生え込んだ広い地面

2018年6月14日 木曜日

 ・・モリーオ市では競馬場を植物園に拵え直すというので、その景色のいい まわりにアカシアを植え込んだ広い地面が、切符売場や信号所の建物のついたまま、わたくしどもの役所の方へまわって来たものですから、わたくしはすぐ宿直という名前で月賦で買った小さな蓄音器と二十枚ばかりのレコードをもって、その番小屋にひとり住むことになりました。(宮沢賢治、ポラーノの広場、序文)
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 あのイーハトーヴォのすきとおった風、夏でも底に冷たさをもつ青いそら、うつくしい森で飾られたモリーオ市、郊外のぎらぎらひかる草の波。
 またそのなかでいっしょになったたくさんのひとたち、ファゼーロとロザーロ、羊飼いのミーロや、顔の赤いこどもたち、地主のテーモ、山猫博士のボーガンド・デストゥパーゴなど、いまこの暗い巨きな石の建物のなかで考えていると、みんなむかし風のなつかしい青い幻燈のように思われます。(宮沢賢治、ポラーノの広場、序文)
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 五月のしまいの日曜でした。わたくしは賑やかな市の教会の鐘の音で眼をさましました。もう日はよほど登って、まわりはみんなきらきらしていました。(同、一、遁げた山羊)
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補註 北海道の6月の風景はモリーオ市の五月の終い頃の風景に相当するであろうか。畑の周りや街のそこここでニセアカシアの花が咲き、いっぱいのツメクサの花が果樹園の地面を填める。
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