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数学が生まれる物語 関数とグラフ

2019年3月18日 月曜日 晴れ(快晴・暖かい・雪解けさらに進む)


志賀浩二 数学が生まれる物語 第5週 関数とグラフ 岩波書店 岩波現代文庫(学術291) 2013年(オリジナルは1992年)


・・数学を育てる母胎は私たちの中にあり、私たちは私たちの中にある数学の種子とでもいうべきものから、小さな苗を育てるように、大切に数学を育てていることに気がつくでしょう。それはちょうど草花が、光と風を受けながら、大地から生まれ育ってくるようなものにたとえられます。(志賀、同書、読者へのメッセージ、ivページ)


・・意識を集中するにつれ、数学の考えは、私たちを私たち自身の中にある深みへとどんどん誘っていくような気がします。この深みへと目を向けるならば、数学は与えられるものではなく、私たちの中から生みださされ、創りだされていくものだという確信がひとりでに湧いてくるでしょう。・・・(中略)・・・数学を支えているものは、数学が生まれるときにはっきりと感ずることのできる喜びであり、緊張感です。(志賀、同書、同上、vページ)


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ミクロ的な視点とマクロ的な視点
・・そのことは、私たちに、微分という概念を生むミクロ的な視点と、グラフの形状のほうに関心を向けるマクロ的な視点との間に、何か懸け橋となるような定理があるに違いないと予想させてくれる。 それが実は平均値の定理とよばれているものなのである。平均値の定理はロルの定理から導かれる。まずロルの定理から説明しよう。(志賀、同書、p157)


・・はじめてこの式を見て、妙な式だと思いました。なぜかというと、右辺のほうに「よくわからない数θ」が含まれているからです。よくわからない値が入った等式など、どんな意味があるのだろうかと思ったのです。でも皆さんは、この点にむしろ平均値の定理の重要さがあることをもう理解されたでしょう。微分で与えられるミクロの視点を、aからa+h までのマクロの視点へと広げれば、どうしても一般的な述べ方の中では、「適当な値」としかいいようのないような、あるあいまいさが含まれてしまうのです。(志賀、同書、p172)


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テイラーの展開


|h| が小さいときこの近似式の精度は非常によいものとなり、θの影響は、霧の彼方のような、小数点以下はるか彼方のところに現れてくることになるだろう。 それでは思い切って n→∞ としてしまえば、θはついに姿を消すのではなかろうか? すなわち、右辺からθの亡霊の消えた次の式は成り立つのではなかろうか?・・・(中略)・・・ θの消えた(6)の式が本当に成り立つなら、どんなによいだろう。ところが、残念なことにこの式は、どんな関数をとっても成り立つという式ではないのである。それどころか、実際に(6)がどんな x に対しても成り立つような関数は、ごく特別の関数でしかない! (志賀、同書、p187-188)


・・特別な関数に対しては、(6)は成り立つ場合があるのである! 実際、ニュートンにとって幸せなことであったし、また微分という考えを生んだ数学にとっても幸せだったことは、私たちがふだん使いなれている eのx乗、sin x 、 cos x   などに関しては、(6)の式が、成り立つことが証明されることにあった。・・・(中略)・・・ これらを、eのx乗、sin x 、 cos x のテイラー展開というのである(同、p191-192)


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