田中正造の問題

 

2010年7月6日

 

宇都宮に出かける所用があり、空いた時間を利用して佐野を訪れた。

宇都宮から東武線で栃木へ。約40分。栃木から両毛線に乗り換え。といっても1時間にせいぜい1本ぐらいのローカル線のため、待ち時間が一時間近くもできたため、蔵の街栃木を散歩。駅前通には学習塾が並び、教育熱心な地域と感じる。

栃木から両毛線。宇都宮から栃木・佐野・足利経由で前橋・高崎に向かう両毛線。この鉄道に乗ったのはこれが初めて。前橋まで行って朔太郎ゆかりの利根川の畔も散策したかったが、今日は佐野と決めている。栃木から数駅で佐野へ到着。駅の北側が城山公園、藤原秀郷ゆかりの佐野城趾。

城趾の遺跡を巡った後、駅の南側に回って駅前通沿いでラーメン屋さんに入り、チャーシュー麺でお昼とする。チャーシューという言葉を聞くと、金子光晴が友達をチャーシューになぞらえた晩年の詩がひらめいて思い出し笑いしそうになる。当分この習慣が続きそうだ。

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日光例幣使街道(旧50号線)へ曲がって、秋山川を渡ってしばらくいってから左手に曲がると佐野市郷土博物館。

正面の一室が田中正造関係資料の常設展示。表装され巻物になっている「謹奏 田中正造」。正造の加筆訂正の墨の上に捺印の朱の色彩。幸徳秋水が「臣ガ狂愚」としたものを、「臣ガ至愚」と訂正捺印、そのほかにも多くの訂正加筆がある。

遺品の石3個も、有名なものであったが、今回初めて実物を見ることができた。その隣には菅笠なども展示されていて、正造の姿が偲ばれる。

田中正造関係地図の脇に、大正2年8月、病床にあった時に、「(見舞いの人々は)田中正造の病気に同情しても、田中正造の問題に同情している人はいない、帰ってもらえ」、と看護の女性に言った、と書かれていた。

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郷土博物館を出て、田中正造生家に向かった。7月の梅雨の合間。曇り空とはいえ、陽射しも明るく、30度を超える猛暑である。札幌暮らしに慣れた私にはこの炎天下を歩くのは厳しく、すぐにぐうの音をあげてしまいそうである。しかも当日は金曜日で、正造翁の生家は休館日(週に3,4日しか開館されない)。たどり着けても、中の資料などを見せてもらうことはできない。

270号線を北上し、菊川町の交差点までも歩けばかなり遠かった。日頃、白石サイクリングロードで鍛えているにしては、すぐに足の裏が痛くなって歩きが苦痛になってきた。

 

 

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237号へ左折。しばらくゆくと右手に榎木の大木と看板を見つけたので、道を渡って行ってみた。堀米地蔵堂。明治2年、正造29歳の時にこの地で手習い塾をしていたとのこと。明治39年、晩年の正造が木下尚江らを案内した当時の写真が看板になって掲げられていた。若き正造が手習いの師匠をしていた時分には「子供の手ほどの」小さな榎の木が、40年近くを経て大木に育っていた。計算すると、今ではさらにそれから104年、上の写真のように立派で元気なまま立っている。虫が食って中が洞になったりはしていないので、まだまだこれから。これからも地域の人々に守られて、そして地域を見守ってゆく榎木。

梅雨の時期とあって道沿いの溝の水は増水している。水は意外ときれいだ。あっと驚いたことには、足元を流れる溝に大きな真鯉が泳いできた。5,60センチはあろうか。増水で池から泳ぎ出てきたものかもしれない。私の田舎の近所の小川でも、梅雨の大水の後はよく、普通には見たこともないような大物が泳いでいたことを思い出す。佐野の237号線沿いの溝はせいぜい幅1メートル程度の小さな流れであるが、よく見ると10cmばかりの緋鯉や、同じぐらいの大きさのフナやコイのような魚が幾匹も元気に泳いでおり、水もきれいで、なかなか豊かな感じである。

足も痛くなり、のども渇いて、ほぼへとへとになりながら、正造翁の旧宅に到着。今度のコースは、余程の健脚か余程の思い入れのある方以外には徒歩では奨められない散歩道と言える。バスなどの公共交通機関も無いわけではないが、数時間に一本なので、時刻表に照らしてうまく往くことができても復路は歩かねばならないだろう。トラックは多く行き交うが、何時間も歩いてもこの街道筋ではバスやタクシーには行き会うことがなかった。私が佐野駅の案内所でもらってきた観光地図には距離が書かれてない。概念的な略図なので、意外と歩けば近いかもしれないという錯覚に陥る場合もあり、このように歩いてみようという無謀も(観光客によっては)やってしまうのかもしれない。ただし、当日は金曜日ということもあり、観光客と言えるような人には一度も一人にも会うことはなかった。

小中町の旧宅。

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ご覧のように小さな民家で、お隣・裏隣のお家も近接している。タクシーが停まる駐車場や観光バスを止めるスペースもない。よって、今回の私のように徒歩でやってくることが推奨され得ないとすると、自転車で訪ねるのがベストと思われる。
生家の道をはさんで向かい側には分骨されたお墓があり、今日も新しい百合の花が生けられていた。97回忌の卒塔婆、その隣にはカツ夫人の74回忌のものが立てかけられてあった。

翁のお墓の隣にあったブランコにすわってゆっくり考える。さて、私は、田中正造のお墓に詣でることはあっても、田中正造の問題に立ち向かうことはない、と正造翁から叱られないだろうか。

私の場合は、私の本業とする医学や生命科学、学問や教育の中でも、多くの人々を苦しめている難題が存在する。それらの問題のどれか本当に大切な問題を見つけ、それに本当に真摯に立ち向かい闘い続けることが、正造翁の遺志に添うことだと思う。私が、がんの治療法の研究を始めて、今年が30年目に当たる。何とか結果が出せるよう、あきらめないで、さらに少しだけでも続けてみたい。

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佐野の郷土博物館で見せてもらった資料によると、渡良瀬川の大洪水の折にも、ここ小中町までは洪水が押し寄せなかったという。洪水が広がったのはここから南側の地域である。次回、もし機会があったら、渡良瀬川流域、谷中方面もできるだけ広範に歩いてみたいと思う。また、足尾の方も訪ねてみたい。健脚とも言えないので、やはり自転車の旅を計画すればよいのだろうか。

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正造翁の旧家を少し先に進むと、増水した濁流の旗川に出た。今回の歩きはここまでということにして引き返す。

途中、人丸神社にもお参り。池の睡蓮が美しかった。これからは諸国の柿ノ本人麿のゆかりの地にも是非足を伸ばしてゆきたいものだ。(去年の7月は太宰府辺りをたっぷり歩くことができた)

帰りは菊川町交差点で237号を直進し、佐野の街の北側を歩いて佐野駅の南口へ。佐野の歩きが5時間にも及び、強行軍であった。(弱音を吐いては、正造翁に叱られそうで、頑張らねば、と思うのだが。) 栃木に着いた頃から雨が降り出し、東武宇都宮線では、雷と大夕立。宇都宮駅前で名物の餃子のお店に入って雨宿り。出てきた頃にはほぼ雨上がり。少し運が良かった。

旅から帰って、着ていたノースリーブの下着を見てみれば、汗が乾いて白い塩の線となり、それが何本も等高線の地図を描いていて、すさまじい発汗量であったことがわかって面白かった。

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以上、2010年7月6日付けWEBページより再掲

 

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教育の核心: 民主主義を育てる

2010年4月29日(昭和天皇誕生日・祝日)木曜日 雨・みぞれ

今日も昨日に続いて、雨、ないしみぞれのような雪。4月も最終週に入ってからの雪は、さすがの札幌でも珍しい方かも知れない。

さて、

民主主義を育てるには私たちはどうしたらよいのだろうか。

一番大切なことは、私たちひとりひとりが自分の考えを持ち、意見を述べることだ。それができるようになるために十分な教育を、自分自身にも、そして子供たちにも、市民ひとりひとりにも、授け、かちとることが必要だと思う。これが、人間の教育の最も核心となる本義である。

意見としては、主張を述べるだけでは足りない。なぜ、そのような主張・結論に至るのか、その根拠が明確に述べられなくてはならない。その際、自分の意見とその根拠を述べるだけでなく、他者の異なった意見・そしてその根拠も考慮されて比較検討する視点が(すなわち、一人の人の意見や視野の中で考慮されることが)必要である。なぜなら、そもそも意見を述べる限りは、別の異なった意見があることが前提になっているからだ。全人類がすべて一致しているような事柄を意見として取り立てて述べるような状況は、それ自体が陳腐で意義がない、あり得ない状況だろう。意見・考えというものは、その性質上、他者との意見考え方の不一致があるからこそ、語られることになるのである。

民主主義が成り立つためには、各人の意見が平等に尊重されなければならない。少数意見を持つ人の考えも十分に述べられ、聴かれなければならない。そのうえで、十分な議論が行われることが必要である。多くの誤りや誤解が見つかることが通常である。意見の交換が十分になされない限り、誤りが気づかれない危険がある。

この時、各人に、広い視点からの、偏らない、十分な情報が平等に与えられることが必須である。この部分が大切であり、古来うまくできてこなかった。権威に寄り掛かることは、自分の意見を形成する上でも、極めて危険である。大学などの高等教育で誤ったことがあたかも正しいかのように教えられることが多いことを各人が銘記すべきである。マスコミがプロパガンダの発信器になっていることも多い。インターネットの普及によってかなり楽になってきたとはいえ、多くの情況で、情報源の偏り・正確な情報の偏在などが、問題の本質をみえなくさせている原因である。

情報が与えられ、多くの議論がなされたあと、各人がそれぞれ自分一人で十分に考える時間が大切である。

そのあと、民主主義では、多数決という手段を取る。

多数決によって正しい結論が得られるという保証はどこにもないことを銘記すべきである。ただ、私たちはできるだけ正しい選択をなすことができるよう、多数決によって適正な結論に到達する確率を少しでも上げられるよう、ポイントを押さえて努力してゆく必要がある。

多数決では、一票が平等に一票であることが民主主義にとって必須である。

この際、それぞれ各人が独立して投票することが必須である。有力者などが派を作って多数決の票の取りまとめをしている場合には、各人が自分の考えを正確に反映した投票行動に結びついていない。これによって一票の平等性が損なわれ、多数決によっては誤った選択につながる可能性が高まる。

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全員一致の誤謬:

全員一致の採決結果は常に危険を孕んでいる。

多くの場合、情報が偏っており偏った結論が誘導されていることが考えられる。議論が不十分であったり、一人で考察する時間的ゆとりがなくて結論や採決が急がされていることも要因である場合がある。

全員一致になりそうな議論に関しては特に、敢えて、反対の意見を考えてみる、そしてその根拠を考えてみる、それを自分の意見・根拠と比較検討してみる、そのような試みを常に行っていく姿勢が大切である。

多くの場合に、より多くの広い・深い情報の追加が必要なことに気づくであろう。自分自身との対話だけでは不十分であれば、他者とのディベート的対話も自己啓発のためには必要であろう。

若い人たちには、特にお願いしたい。敢えて、自分とは反対の意見を考えてみる、そしてその根拠を考えてみて欲しい。

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重ねて、

教育において、

民主主義の担い手になる一人一人を育てていくことが教育の核心である。自分自身の教育においても、そして、初等教育はもちろん、大学教育や市民の教育においても。

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以上、2010年4月29日付けWEBページより再掲

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ウクライナ危機 続報紹介

 

2014年3月24日 月曜日

前回、私、ウクライナ政変に関するWEB記事を書き、さらに田中 宇(たなか・さかい)さんの記事やロシアの声などの情報ソースに関して紹介させていただきました。ずいぶん詳細な分析を田中さんが続けて書かれていらっしゃいますので、続報として以下にご紹介いたします。取っかかりとしても役立つかと思いますので、どうぞお読みいただけますよう。

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田中 宇(たなか・さかい)http://tanakanews.com/  田中宇の国際ニュース解説  世界はどう動いているか

露クリミア併合の意味【2014年3月20日】  http://tanakanews.com/140320russia.htm

◆ウクライナから米金融界の危機へ【2014年3月17日】 http://tanakanews.com/140317dollar.php

◆米露相互制裁の行方【2014年3月15日】 http://tanakanews.com/140315russia.php

◆ウクライナ危機は日英イスラエルの転機【2014年3月11日】  http://tanakanews.com/140311russia.php

プーチンを強め、米国を弱めるウクライナ騒動【2014年3月9日】 http://tanakanews.com/140309russia.htm

◆危うい米国のウクライナ地政学火遊び【2014年3月5日】  http://tanakanews.com/140305ukraine.php

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ウクライナの政変 その2

 

2014年3月6日 木曜日

 

ウクライナの2014年2月クーデター その2

 

法によらない暴力的な政権転覆が行われれば、多くの人民に危害が及ぶ。

 

前回のWEB記事ではウクライナ憲法の条文を引きながら、法の支配下で平和的に緩やかに良い方に向けて進んでいって欲しいことを述べた。私の願いである。

 

しかし、現在のウクライナのようにすでに憲法が守られていない状況において、憲法を懐かしみながら「本来こうするべき」なのだが、というような議論をするだけでは、非現実的であり建設的でもない。「それでは現在の最善手は何か?」という問いかけが喫緊の必要課題である。

 

このような局面でもっとも大事なのは、何が起こっているかをできるだけ正確に大局的に把握しすることに努めることであろう。できるだけ多くの情報を引用しながら、ウクライナの現状に関して調べてゆきたい。

 

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日本の代表的なマスメディア、たとえばNHKや読売・朝日をはじめとする大手新聞などの情報には多くの方々が日常的に接しておられると思う。が、それらのメディアから得られる情報は多くの場合に同じソースたとえば記者クラブでの公式発表や共同通信からの配信などひとつの情報源から派生した同一の記事となる。そのため、現状理解を深めるためにはインターネット・雑誌・単行本などからの情報を通じて別の視点からどのように見えるかも含めて検討してみることが必須である。

 

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2014年3月7日 金曜日

ということで、今日は、以下に簡単に日本語で読めるネット情報源をいくつか紹介します。どうぞ読んでみてください。

 

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情勢を冷静に正確につかみたい。そのため、できるだけ多面的からの情報をもとに分析するような記事からスタートするとよいと考えます。ここでは、アプローチしやすい情報源としていくつかを紹介いたします。

1.田中宇の国際ニュース解説

田中宇(さかい)さんの記事からは大変多くを学ばせていただいている。今回のウクライナ情勢に関しても以下の記事がよくまとめられている。

田中宇 危うい米国のウクライナ地政学火遊び 2014年3月5日http://tanakanews.com/140305ukraine.php

田中さんはこの地域の地政学的な動向に関しても以前から多くの記事で詳しく分析されていて大変勉強させていただいている。

田中宇 プーチンを敵視して強化してやる米国 2011年12月19日http://tanakanews.com/111219russia.php

田中宇 ウクライナ民主主義の戦いのウソ 2004年11月30日http://tanakanews.com/e1130ukraine.htm

田中宇 コーカサス安定化作戦 2004年4月29日http://tanakanews.com/e0429caucasus.htm

田中宇 ロシアの石油利権をめぐる戦い 2004年3月18日http://tanakanews.com/e0318russia.htm

田中さんの記事はよくまとめられていて読みやすく、考察の根拠となるインターネット情報ソースが記載されているので簡便に情報源を辿ることができ、大変有難く読ませていただいております。

以下、少し長くて申し訳ありませんが、2004年11月30日の田中さんの記事から引用させていただきます。10年後の今回の情勢を理解する上でも大変参考になる記載です。 <以下引用> http://tanakanews.com/e1130ukraine.htm

▼分裂して損するのはウクライナ人自身

ユーゴスラビア、グルジア、ベラルーシ、ウクライナでアメリカが政権転覆を企てた背景には、ロシア寄りの政権を倒して欧米寄りの新政権を作ることで、ロシアを封じ込める意図があるというのが一般的な見方だ。

ウクライナもユーシェンコが大統領になったらNATOに加盟し、ロシアにとって軍事的な同盟国が脅威へと変質すると予測されている。また、これまでロシアの石油を欧州に輸出するために使われていたウクライナ国内のパイプラインも、アメリカが権利を持つアゼルバイジャンのカスピ海油田の石油を運ぶかたちに改められ、石油利権的にも重要な転換が行われると予想される。(関連記事

ユーゴスラビアとグルジアでは、政権転覆は両国の不安定な政情を安定させる効果もあった。ユーゴスラビアは、転覆前のミロシェビッチ政権の時は国際的に孤立していたが、コシュトニツァ政権になって国際社会に復帰した。グルジアでは、シュワルナゼ政権時代にアジャリア、南オセチア、アブハジアという国内3地域が分離独立して割拠する状態になったが、サーカシビリが政権について以来、これらの地域をグルジアに再統合する強硬策が展開され、国情の安定化が図られている。

ところがウクライナの場合は逆に、今回の政権転覆の試みは、これまで統一されてきた国内を東西に分裂させて不安定にする結果を生みそうである。ウクライナは、ロシアに接する東部にはロシア系住民が多く、宗教も正教会キリスト教(ウクライナ正教会、ロシア正教会)であるのに対し、ポーランドやルーマニアに接する西部ではウクライナ系住民が多く、宗教もカトリック系のキリスト教である。東部は親ロシア感情が強く、西部は反ロシア感情と親ヨーロッパの感情、それからウクライナ・ナショナリズムの感情が強い。

ロシア系住民は人口としては全国民の22%しかいないが、ソ連時代から公務員などの要職にはロシア系が多く、公用語もソ連崩壊後はウクライナ語になったものの、実際にはロシア語が広範囲に使われている。冷戦後のウクライナでは、東部と西部、ウクライナ系とロシア系を分裂を回避しつつ、外交的にもロシアとEUの両方に配慮するかたちでやってきた。

ところが今回の選挙では、野党のユーシェンコは西部が地盤で、ウクライナ西端の町リヴィフ(リボフ)が牙城である。半面、与党のヤヌコビッチは東部が地盤で、東端のドネチクやルハンシクといった都市が牙城となっている。候補者が東西対立のかたちをとっているため、選挙の不正が問題になって以来、これまで回避されてきた東西の対立が一気に強まっている。東部の諸都市では、ユーシェンコが大統領になった場合に備え、東部地域がウクライナの中で自治を持った共和国になるための住民投票を行う準備を開始した。(関連記事

東部地域は炭鉱や鉄鋼産業が盛んな重工業地帯で、ユーシェンコが勝ってウクライナがEUに接近した場合、EUの安価な鉄鋼製品がウクライナに流れ込み、東部地域の産業が壊滅するおそれがある。そのこともあって、東部の人々は産業保護主義の強いロシアと親密な関係を持ち続けることを望み、ロシア系・ウクライナ系を問わず、ヤヌコビッチを支持する傾向が強い。(関連記事

ウクライナのような多民族の複合国家では、各民族のナショナリズムや地域主義の対立をできる限り回避することが国家の安定につながる。外交的には、ロシアとヨーロッパの両方とバランスよく関係を築くことが必要だ。ところが現在ウクライナで起きている紛争は、まさにその逆の不安定化を煽っている。今回の紛争によって損をするのは結局のところ、当事者であるウクライナ国民全体であることを思うと「民主主義」の幻想とは馬鹿馬鹿しいものであると感じられる。

<以上、 田中宇 ウクライナ民主主義の戦いのウソ 2004年11月30日http://tanakanews.com/e1130ukraine.htm  引用終わり>

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2.ロシアの声 日本語放送とWEBサイト http://japanese.ruvr.ru/

田中宇の国際ニュース解説でもときどき引用されることもあるロシアの声。その日本語サイトと毎日1時間ではあるものの日本語で放送がなされています。

私たちにとって日本語で海外情報を得ることができるのは大変簡便で有難いことです。ロシアのサイドに立っているのはもちろんのことですが、日本とロシアとの友好推進という大局的立場から作られているロシアの声日本語放送からは、とても多くの情報を得ることができます。特に、プーチン大統領やロシアの指導的立場にある人々が、日本人に対してどのようなメッセージを送りたいのか、それをつかむには大変便利なメディアのひとつだと感じています。

最新の2014年3月6日 14:36 の記事から少し引用します。 http://japanese.ruvr.ru/news/2014_03_06/268292761/

<以下引用>

クリミア議会、全会一致でロシア連邦への編入を議決

クリミア自治共和国最高会議はロシア連邦の構成主体としてのロシア連邦への編入を全会一致で議決した。16日に住民投票が行われ、自治共和国としての最終決定となる。

議会では次のように決定された。

   1、 ロシア連邦の構成主体として、ロシア連邦に加盟する

   2、 2014年3月16日に、全クリミア市民(セヴァストーポリ市民を含む)を対象とした住民投票を実施する。次の二択をめぐって住民投票が行われる。

   1)あなたはクリミアがロシア連邦の構成主体としてロシアと合体することに賛成ですか?

   2)あなたはクリミア自治共和国1992年憲法の効力の復活、ウクライナの一部としてのクリミアという地位に賛成ですか?

http://japanese.ruvr.ru/news/2014_03_06/268292761/

<以上、引用終わり>

私が思うに、前回の私のWEB記事で紹介したウクライナ憲法の条文によると、クリミア自治共和国最高会議はウクライナ憲法の規定の支配下にあるため、ウクライナ憲法の条文に照らし合わせてみれば、上記のようなロシア連邦への編入を議決する権限がクリミア自治共和国最高会議の権限の範囲内にあるとは到底思われません。むしろ、明らかにこのような分離をウクライナ憲法は条文で禁じています。ただ、現在のようにウクライナの政権がウクライナ憲法を踏みにじって成立している状態においては、従うべきウクライナ憲法は現状で無効のものとなっているわけであり、このような混乱状態においては、クリミア自治共和国最高会議が今回のような議決を行うことは現実的な妥当な行いとせざるを得ないだろうと判断されます。ここまでの私の議論がだらだらと歯切れが悪いのは、「憲法が守られない状態でどのような法的規範に基づいて行動すべきか」という実践的法学(?)を私が全く学んでも考えてもいなかったことによるものです。
ロシアの声にもどって、サイドのカラムにはウクライナ情勢に関連して以下のような電子投票の3択アンケート世論調査がなされています。

<以下引用>

「ウクライナ革命」についてどう考えますか?

a. 国民は愛想が尽きた政権を転覆する権利を持っているので、支持します。
b. 政権は選挙や国民投票で変更すべきものであり、革命は不法です。
c. カラー革命は、都合の悪い政権を除去するため、米国の手によるツールなのです。

<以上、引用終わり>

私が思うに、aとbは二律背反であるが、cの選択肢はbと背反するものではないので、厳密にひとつの答えを要求する選択問題になっていません。とはいうものの、ロシアの声が、日本語の読者に何を考えてもらいたいかが明確に示されており、興味深いものです。

さらに、2月28日, 17:39 http://japanese.ruvr.ru/poll/129271970/ の記事でアンケート結果が報告されており、以下の通り。

<以下引用>
「ウクライナ革命」についてどう考えますか? 世論調査に参加 676 人.
8% 国民は愛想が尽きた政権を転覆する権利を持っているので、支持します。
22% 政権は選挙や国民投票で変更すべきものであり、革命は不法です。
69% カラー革命は、都合の悪い政権を除去するため、米国の手によるツールなのです。
<以上、引用終わり>

世論調査に参加 676 人と少数であり、ロシアの声をフォローしている日本語視聴者(ほとんどは日本人か)というバイアスがかかるので、あくまで知的な参考意見としてとらえるべきですが、それにしてもこのような問いかけがメッセージ性をもって訴えてくるのは面白い。いわゆるメジャーなマスコミとは少し異なった視点から考えてみるための良いヒントです。

ロシアの声の日本語サイトでは、当然のことながら日本との友好を最優先しており、日露関係(サイトでは露日関係)が大切な記事となっています。少し長いのですが、3月6日付の記事から以下に引用します。 http://japanese.ruvr.ru/2014_03_06/268301526/

<以下引用>

米国の対ロシア制裁の呼びかけと日本

米国は、ロシアに対する経済制裁を呼びかけているが、日本が制裁に加わることは恐らくないだろう。なぜなら、対ロシア経済制裁を受け入れれば、日本の利益が損なわれるからだ。

日本の政治家ならびにロシアの専門家たちはこのような見解を示している。
茂木経 済産業相は、日本とロシアの関係は建設的な方向で発展しており、経済外交や資源外交で方針の変更はないとの考えを示した。ロシアの著名な東洋学者で、元駐 日ロシア大使のアレクサンドル・パノフ氏は、茂木経済産業省の発言に期待を表明し、過去の歴史を引用しながら次のように語っている。
「ソ連時代でさえ、日本はしぶしぶ西側の制裁に加わり、すぐに拒否した。ソ連崩壊後、ロシアがカフカスでテロ掃討作戦を実施した時、G7はロシアに対して制裁を発動しようとした。日本はその時、これはロシア国内の問題であり、ロシアは自国の力と手段でこの問題に対処するための権利があると発表した」。
パノフ氏によると、米国はウクライナ情勢をめぐるロシアの動きに対して制裁を科すよう呼びかけているが、日本にはこの呼びかけを支持できない大きな理由があるという。その一つは、政治的要素だ。パノフ氏は、次のように語っている。
「日本とロシアの指導者たちの間では、とても良好な関係が築かれはじめたところだ。安倍首相の戦略は、政治的ならびに個人的な良い関係、そして貿易経済関係の発展を通して、両国の協力関係全体のレベルを向上させることだ。日本はこのような形で2つの問題を解決しようとしている。1つは領土問題の解決策の模索で前進すること。2つ目は、日本の孤立状態からの脱却だ。なぜなら、日本と中国の関係は非常に悪く、韓国との関係も良くない。北朝鮮との関係は言うまでもない。重要な同盟国である米国との関係も、すべてが順調というわけではない。このような背景の中、ロシアと日本の関係はごく正常にみえる。私は、日本がこの関係を台無しにすることはないと考えている。」
パノフ氏は、経済的要素も重要だと指摘している。日本のロシア産石油・ガスの依存度は10パーセント未満だが、日本の原発停止を受け、ガスの輸入量は増加した。同分野では長期契約が見込まれており、契約破棄は日本経済に深刻な打撃を与える恐れがある。パノフ氏は、次のように続けている。
「日本はウラジオストク郊外の液化天然ガス(LNG)工場の建設にも投資している。また日本は、南回りの航路に代わって北極海航路を積極的に利用する計画だ。これらは全て、ロシアとの協力なしでは不可能だ。そのため、日本がロシアに対する制裁を自ら進んで支持するとは思えない。」
日本が対ロシア制裁を支持する場合、日本経済は大きなリスクを伴う。日本は何のためにそのような危険に立ち向かう必要があるのか?その理由を明確にする必要がある。米国は、ロシアがあたかもクリミア自治共和国を占領、併合し、ウクライナを分裂させたため、制裁を発動する必要があると主張している。だがそれは、嘘だ。
プーチン大統領は、ロシア上院(連邦会議)からウクライナ領内におけるロシア軍の使用について委任された。軍の派遣に関する決定はまだ下されていない。今後もこの決定が下されないことに期待される。クリミアに駐留しているロシア軍は、ウクライナとの協定に基づくものであり、秩序維持やテロ対策に取り組んでいる。ロシア軍は非常に友好的で礼儀正しく、地元住民は彼らを侵略者ではなく、民族主義者から自分たちを救い出してくれる救世主だと考えている。
プーチン大統領は5日夜、インタビューの中で、ロシアがウクライナの崩壊やクリミアをロシアへ併合する計画はないとの考えを表した。
プーチン大統領は、「私は、その領土に住む市民だけが、自由な意思表明や安全が確保された環境の中で自分の将来を決定することができ、そうするべきだと考えている」と述べた。またプーチン大統領は、もしコソボの人々やコソボのアルバニア人、また世界の多くの場所でそのようなことが許されたならば、国連の文書に明記されている民族自決権は今も存在しているはずだ。だが我々は、いかなる場合であってもそのような決定を誘導したり、そのような感情を過熱させるつもりはない」と語った。

http://japanese.ruvr.ru/2014_03_06/268301526/  <以上、引用終わり>

 

ロシアが日本語放送で日本語を理解する人々(すなわちほとんどは日本人)のために、政治的・経済的な視点からロシアならびに日本の利益と日露友好につなげてゆくためのメッセージを提案して放送しています。ロシアの地政学の専門家が予想し提案するとおりに日本の政治家や官僚が私たちの国を舵取りするかどうかその行方を予想するのは難しいところです。が、少なくともロシアの識者が何を望んでいるかは明らかに伝わってきます。

 

ロシアの声の日本語放送は、プーチン大統領が公式に日本人に何をどのように理解してもらいたいか私たちが理解するためにまずはスィッチを入れて聞いてみるべきメディアかと思います。対岸のユーラシア大陸の世界(この場合はモスクワ)からこのようなメッセージ性をもって訴えてくる放送に耳をかたむけるのは大変面白いことです。繰り返しになりますが、いわゆる日本のメジャーなマスコミとは少し異なった視点から考えてみるための良いヒントとなるでしょう。

 

もちろん、どんなメディアにもそれぞれのメディア固有のバイアスが高いのですから、私たちはどんなメディアに対しても鵜呑みにすることなく立場の異なった他のメディアからの情報とも比較検討しながら、自分の意見形成の参考となるように消化してゆかなければなりません。

 

以上、今回は、田中宇さんのニュース解説とロシアの声の日本語サイトとを紹介しました。長くなったので、サイトの紹介に関して今回はここで終わりにしたいと思います。

 

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付け足しになりますが、今回のウクライナ情勢を理解するためにもどうしても欠かせない視点は、歴史的な視点です。

たとえば、2013年のシリアで、遡っては2011年のリビアで、どのようなことが起きたのか。アフガニスタンで、イラクで、どのような戦争が戦われたのか。

アフリカの国々で何がこの100年ないし500年で起きてきたのか。ヨーロッパが何をしてきたのか。明治以降の日本にもう一つ別の進み方がなかったのか。

ウクライナ情勢をみていると、今私が読んでいる歴史本、ヨセフスのユダヤ古代誌の最後の巻あたりに出てくるガイウス・カリギュラ帝(第3代ローマ帝国皇帝 在位:37年- 41年)の暗殺直後のローマ混乱の詳細との部分的共通性をいくつも見いだします。

不思議なことともいえますが、人々が主人公である私たちの歴史のなかではいろいろな失敗を繰り返すことがしばしば経験されるのでしょう。それでも、失敗を繰り返すのが当たり前とあきらめないで、これからの私たちの選択のなかで、歴史から学んだことを生かしてゆかねばなりません。

 

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そして今の私たちは何をすればよいのか。どんな選択を選べばよいのか。

 

これからも歴史の本を読みながら少しずつ考えを深めてゆきたいと思います。

 

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