出アフリカから日本人になるまでの祖先たち

2016年1月26日 火曜日 曇り

篠田謙一 日本人になった祖先たち DNAから解明するその多元的構造 NHKブックス 2007年

ミトコンドリアDNAの系統のみを調べて、そもそも形態学に基盤を置いている多様な集団の系統を知ろうとすることには、はじめから限界があることを知っておく必要があります。正確なヒトの拡散の過程を追究するためには、ミトコンドリアDNAとY染色体の遺伝子の双方を解析して得られた結果をもって描くことが必要になります。(篠田、同書、p33)

世界の集団におけるALDH2変異型の分布 変異型遺伝子の分布の様子は、中国の南部でこの遺伝子に突然変異がおこり、それば各地に広がった様子を示している。(Harada 1991 より作成)(篠田、同書、図1-2、p36)

ALDH2は、ホモ4量体。そのなかに一つでも変異型を持っていると正常に働かない。よってALDH2ヘテロ変異型の、正常型は16分の1(約6%)(篠田、同書、p35より抄録)

出アフリカは八万五千から五万五千年前のどこか。彼らがなぜアフリカにかくも長い間とどまったのか、そして出アフリカを果たした直接の原因は何だったのか、不明。(篠田、同書、p50より抄録)

出アフリカの二つのルート
1.北アフリカから出て行くもの。紅海の北端からシナイ半島を通って中東に抜けていく経路を想定。
2.エチオピアを通ってアラビア半島を抜け、南アジアに達する経路を想定。その後彼らは南アジアの海岸を伝って、四万年以上前にはオーストラリア大陸に到達したと想定されている。(同書、p52より抄録)

なぜアフリカで私たち新人の直接の祖先が生まれたか、不明。(同書、p55より抄録)

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Harada S. 1991 Genetic polymorphism of alcohol metabolizing enzymes and its implication to human ecology. J. Anthropological Society of Nippon (人類学雑誌) 99: 123-140

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Ingman, M. et al. Mitochondrial genome variation and the origin of modern humans. Nature 408, 708-713, 2000

ABSTRACT The analysis of mitochondrial DNA (mtDNA) has been a potent tool in our understanding of human evolution, owing to characteristics such as high copy number, apparent lack of recombination, high substitution rate and maternal mode of inheritance. However, almost all studies of human evolution based on mtDNA sequencing have been confined to the control region, which constitutes less than 7% of the mitochondrial genome. These studies are complicated by the extreme variation in substitution rate between sites, and the consequence of parallel mutations causing difficulties in the estimation of genetic distance and making phylogenetic inferences questionable. Most comprehensive studies of the human mitochondrial molecule have been carried out through restriction-fragment length polymorphism analysis, providing data that are ill suited to estimations of mutation rate and therefore the timing of evolutionary events. Here, to improve the information obtained from the mitochondrial molecule for studies of human evolution, we describe the global mtDNA diversity in humans based on analyses of the complete mtDNA sequence of 53 humans of diverse origins. Our mtDNA data, in comparison with those of a parallel study of the Xq13.3 region7 in the same individuals, provide a concurrent view on human evolution with respect to the age of modern humans.

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森を焼くことなく生きのびることができなかった人類の原罪

大場秀章 はじめての植物学:植物たちの生き残り戦略 ちくまプリマー新書193 筑摩書房 2013年

2015年8月13日 昨日は雷雨・達布の地崩れ土砂流れ。

今日は晴れ、朝の気温は22,3度とさわやか。ススキが穂をそよがせている。

 樹上での果実食を得意として進化してきた霊長類の一員である私たちヒトは、速く走るわざも木登りのわざも持ち合わせなかった。他の動物には苦くまた酸っぱくて食べない草や実、種子を食べ、生きのびてきたのだろう。おそらく、あるとき山火事で焼けた動物の肉を食べることを覚え、それが昂じて自らの出自の森を焼いた。そのなれの果てが都市砂漠と消滅寸前の熱帯林などの悲しむべき姿である。森を焼くことなく生きのびることができなかった人類の原罪をもっと自覚すべきである。さらにいくら強調してもしすぎることがない、植物なしには生きながらえることができない宿命についてもだ。(大場、同書、p180)
 
 植物界の現状をみるにつけ悲惨な気持ちになるのだが、その一方で遠い未来の植物について想像するのも私が好きなことのひとつである。というのも種子を生み出し、花と果実をつくり、海の中で袂を分かった動物たちと陸上において再び共生の道を歩む選択を植物はした。被子植物の進化はまさに動物との共生に関係している。
 動物もだが、植物ももうこの先はなく、消滅へとむかうのだろうか。私は被子植物にない新たな特徴をもった、まったく新しい植物が誕生してくる可能性だって十分にあるのではないか、と思っている。私はときどき、その様相を想像して楽しんではいるのだが、未だ語るに足るその姿かたちを提案できないでいる。この未来の植物像の提出、それこそ未来を担う若い世代に託すにふさわしい課題であると私は思う。(大場、同書、p180-181)

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Atkins, Thermodynamics

The Laws of Thermodynamics: A Very Short Introduction
Written by: Peter Atkins
Unabridged Audiobook Narrated by: Nick Sullivan Length: 3 hrs and 31 mins

2015年2月26日 木曜日 曇り

アトキンスの熱力学本、スタート。日本語訳で通読したものと同じだと思うが、今回は英語版・オーディオブックで。

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Carl Sagan Contact

Carl Sagan Contact 1985
audiobook narrated by: Laurel Lefkow, Simon & Schuster Audio
Length: 14 hrs and 42 mins, Unabridged Audiobook

Publisher’s Summary: The future is here…in an adventure of cosmic dimension. In December, 1999, a multinational team journeys out to the stars, to the most awesome encounter in human history. Who – or what – is out there? In Cosmos, Carl Sagan explained the universe. In Contact, he predicts its future – and our own. ©1997 Carl Sagan (P)1997 Simon & Schuster

2015年2月13日 金曜日 曇り

カール・セイガンのコンタクト1985年、オーディオブックで聴了。14時間40分の長編で、ほとんど音楽のCDを聴くようにして聞き流してしまった。

一昨日は休日を利用して、久しぶりにセーガン氏のコスモスのDVDを家人といっしょに観た。(こんなにゆっくりできることは稀)

セイガン氏のコスモスは秀逸。現代の多くの職業科学者の営みは、先陣先駆けの功名争いを本質とし、そのためのビッグプロジェクト助成金獲得競争に明け暮れる。そんな職業科学が若い人たちのあこがれをはねつける暗いものになってしまいがちな今、30年前に作られたこのコスモスの映像とメッセージは、ほのかながら正しい方向への光を放つ灯台の役割を果たしてくれるだろう。いつか機会があれば、若い人たちといっしょにこの番組を観てみたい。

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カントールのところでも出てきた「超越数(transcendental numbers)」が重要な鍵になっていておもしろい。

SETIのプロジェクトは今どうなっているのだろうか。

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Hawking History of Time

Stephen Hawking and Leonard Mlodinow, A Briefer History of Time, Bantam Press, 2008

AUDIOBOOK A Briefer History of Time UNABRIDGED
By Stephen Hawking, Leonard Mlodinow
Narrated By Erik Davies 4 hrs and 21 mins

2015年2月10日 晴れ 昨日の夜から一日かけて、オーディオブックを聴きながら読了。

この本では、ひも理論や時間旅行の話なども短く上手に語られている。先日紹介したタイムパラドックスに関してもスタンダードな解説がなされている。

ホーキング氏も宇宙の法則、それを作ったもの creator 創造者、その他擬人的な使い方も含めて神 God という言葉を多用している。アインシュタインの有名なことば ‘God does not play dice with the universe’ も引用されている。ホーキングさんのウェブページで (http://www.hawking.org.uk/does-god-play-dice.html) Stephen Hawking ‘Does God play Dice?’ というページが掲載されており、ホーキング氏もほぼ同様の God という言葉の使い方を好む物理学者であることがみてとれる。

以下はこの小さな素敵な物理本に対するちょっとした苦情。

1.朗読がやや棒読みに近い。物理学本なので、あまり朗々と感情豊かに読む必要はないかもしれないが、もう少し気持ちを込めてメリハリの効いた読みはできないものか。

2.数式の出てこない物理学本。この手の本は読めば読むほど謎が深まる感じ。どうしてこういう不思議なことが理論づけられたかが解説されないで答えや結論だけが示されてしまう。そうなると、信じるか信じないかの読書領域に踏み込んでしまいそうで、私は思わず身を引いてしまう。この本の内容ぐらいのところは既に概略は読んでしまっているので、私としては、今はむしろ less brief な解説をじっくり聴いてみたいところだ。

3.ドーキンス本のところでも述べたが、物理学者が GOD という言葉を本来の意味と違った意味で使うのは困る。人格神を信じている人たちをはじめ多くの人びとにさまざまな混乱を与える用語法になっているからだ。ホーキング本では、God という言葉を使った擬人的な表現が、文章を簡潔に引き締め、人びとに理解されやすいものにしているのは確かである。しかし、これからの物理学者は、このような慣用的な神言葉の使い方に安易に頼ることなく、より簡潔で美しい物理学の言葉で語ってゆくことになろう。

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これからは数式の出てくる物理学もしっかりと勉強して、ホーキング本のここの記載が素晴らしく要領を得ている、などという賛辞を贈れるまでに生長したいものと思う。

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