カテゴリー別アーカイブ: biology

鳥獣害対策Q&A:被害の原因

2017年9月12日 火曜日 雨

江口祐輔 本当に正しい鳥獣害対策Q&A 被害の原因は「間違った知識」にあった! 誠文堂新光社 2016年

 さらに、人里との境界にあたる林縁部には田畑や耕作放棄された茂みが存在します。野生動物はこの茂みを好みます。・・人間に見つからない拠点が人里にあり、その周囲においしい餌がある。野生動物は、人間がその存在に気づくずっと前から、すでに人里を利用しているのです。(江口、同書、p13)

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コナガ(小菜蛾)おもしろ生態とかしこい防ぎ方

2017年9月12日 火曜日 雨

田中寛 コナガ おもしろ生態とかしこい防ぎ方 農文協 1993年

要は、収穫終了まで実害のない程度におとなしくしてもらえばよい。なだめ、すかしながら、だまし通せば目的は達したことになる。コナガとの戦争とはいうものの、彼らにとっては命がけで、こちらにとっては一種のゲームである。・・もっと楽しもう。あえてこの不謹慎な言葉を出陣にあたってのはなむけとさせていただく。(田中寛、同書、p117)

畑の中の雑草にもコナガがわんさといる
 キャベツ畑の畝間やあぜ道には雑草がたくさん生えており、ナズナやタネツケバナといったアブラナ科雑草が目につく。・・
雑草にもついでに薬をかけよう
 こんな圃場でキャベツだけに薬をまいてもダメなことは明らかだ。めんどうだけれど、畝間やあぜ道にもていねいにしっかりとまいておかないと薬剤散布の効果が長続きせず、結局は大きな損をする。・・草ぼうぼうにしている農家では、自分の畑に合ったやり方で除草の方法やタイミングを工夫されたし。(田中寛、同書、p94)

補註 著者の田中寛さんは大阪府立農林技術センターの方。

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薬剤散布の達人が非常によく効く殺虫剤をていねいにまいたとしても、散布むらがまったくなくなることはない。(田中寛、同書、p109)

補註 ボルドー液などの予防的殺菌剤についても同じ。スピードスプレイヤーではなおさら大ざっぱとなり、散布むらが一定の割合で残るだろう。ブドウ栽培においてボルドー液散布だけでは、雨が降って蒸し暑い日本(北海道含め・・)の夏をべと病から逃げ切ることは難しいと思い知らされた今年の9月10日であった。(2017年9月12日・追記)

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腐植を減らさず、多様で多層の土壌生物相を育むこと

2017年9月4日 月曜日 快晴

三枝敏郎 センチュウ おもしろ生態とかしこい防ぎ方

 耕地の荒廃から逃れるには、腐植を減らさず、多様で多層の土壌生物相を育むことが必要である。
 土壌微生物相の中で、土に最も大きな影響を及ぼすのは、多種類・多数のセンチュウの動向である。耕土中のセンチュウの種類の構成は、土の肥沃度、荒廃の指標とさえいいきれるのである。(三枝、同書、p37)

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ボルドー液を使えばサビダニが増える

2017年8月29日 火曜日 雨のち曇り

田代暢哉 果樹の病害虫防除 ラクして減農薬 農文協 2007年

ボルドー液の問題点
⑤サビダニ・ハダニが増える
ボルドー液を散布するとミカンサビダニは間違いなく増加します。サビダニ対策をしていないと大きな被害を出してしまうので、注意が必要です。ハダニ類も増える場合が多いようです。・・なぜ、サビダニが増えるか原因はよくわかっていませんが、果実表面に生息して密度抑制に働いているサビダニ寄生菌類をボルドー液が抑制するからではないか、という説が有力です。(田代、同書、p138)

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補註 私のブドウ園では今年、ボルドー液を使い続けてきたので、サビダニ(ブドウハモグリダニも近縁)が増えるという機序が働いているかもしれない。
 今のところ、症状は1本の苗で認められただけだが、対応は迅速に進めたい。

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シカの数を抑制する力を失ってしまった過疎化農山村

2017年8月26日 土曜日 晴れ

高槻政紀 シカ問題を考える バランスを崩した自然の行方 ヤマケイ新書 2015年

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シカ増加の背景

一九七〇年代から大きく変容した日本の農山村:
この変容は徐々にではなく、かなり不連続に変化し、伝統的農業形態をまったく異質なものに変えたといってよいほどのものであった。そして「限界集落」という言葉が生まれ、コミュニティーとしては成り立たない様相を呈するまでになってしまった。
 このことは当然、シカと農山村社会との力関係を変えた。ある閾値を超えた段階で、シカの増加ポテンシャルを抑制できなくなってしまったように思われる。そのことは農業人口の減少に伴うハンター人口の減少に代表されるが、実際にはシカにとっての生息地の変化のほうが大きな影響力を持ったと思う。・・結果としてシカが里山に引きつけられることになった。過疎化した農山村はそのシカの数を抑制する力を失ってしまった。およそ、こうしたことがーー場所により時間や程度の差こそあれーーこの二〇年ほどで進行したといえる。(高槻、同書、p173)

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・・農山村での人口減少と高齢化はシカを農地に接近しやすくし、密猟を含む狩猟圧が著しく弱くなった。明治時代の乱獲によって減少し、山地帯でひっそりと生き延びてきたシカは徐々に回復しはじめた。これが一九八〇年代であった。この頃、ハンター数が減り始めた。
 ここから先は私の推察になる。シカ集団のサイズと、ハンターが頭数を抑制できる機動力とが、どこかの時点でバランスを崩し、シカの増加が抑制できなくなったと思われる。それがおよそ一九九〇年代だった可能性が大きい。こうして山地帯でシカはタガがはずれたように増加するようになった。
 このとき、山地によっては人工林が広い面積を占めていた。人工林は食料が少ないから、一部のシカは低地の里山に侵入するようになった。里山では農地の除草(雑草の除去)(補註##参照)、雑木林の柴刈りが行われなくなったので、シカが接近しやすくなっていた。このことが「奥低里高」を生じさせたと思われる。(高槻、同書、p196-7)

補註## 農地の除草(雑草の除去)をむやみにやればかえってシカのエサを増やしてしまうことになる・・などなど詳細(ただし、実地の実践では重要)な注意点に関しては、昨日紹介した井上さんの本を参照下さい。

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 では都市生活者は本当に野生動物のことを理解し、被害の実態を知り、本気で問題解決を考え、実行してくれるだろうか。ましてや、自然植生が変化しているから問題だとして、何かの動きをとってくれるだろうか。とてもそうは思えない。都市生活者は自然から離れた生活をしている。何事もそうだが、身近でなければ実態が把握できない。シカによる農業問題も、自然植生や生態系への影響も、実感としてはまるで感じられず、ひとごとである。このままでは問題はさらに深刻になる可能性がある。
 今や都市住民が多数派になったことを考えれば、重大なのは都市住民がシカ問題に象徴される農山村における野生動物問題に関心をもつようになることだろう。つまり、かつて野生動物の問題は農山村が取り組んでいたが、今や社会全体が考えなければいけない問題になっているということである。(高槻、同書、p200-201)

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