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標的化抗体の探索の歴史

2018年4月13日 金曜日 曇り
抗体探索系の歴史を振り返ってみると・・2004年のうちにFZ33ファイバー変異型アデノウイルスの抗体探索系が確立し、以後、iTox法に移行しながら、私自身は2013年までのちょうど10年間地道に探索を続けたのである。実用化の途上にあるのは多くのうちの2つである。
以下は2004年12月13日付けの上記ウェブページからの抜粋 <以下引用>

5.新規標的分子の系統的探索:
上述したように、膵がん、前立腺がん、メラノーマなどの腫瘍細胞では、アデノウイルス受容体CARの発現が低いために感染しにくい場合も多い。私たちは、これらのがん細胞に選択的に遺伝子導入できるような標的化の候補分子を探索するために、抗体のFcドメインに結合するProtein AのZ33モチーフをAd5ファイバーノブHIループに持つAdv-FZ33アデノウイルスを作成した(図4)。図5の概念図に示すように、このファイバー変異型アデノウイルスと抗体を併用することによって、該当する抗原分子を発現する腫瘍細胞に高い効率で遺伝子を導入することができる。CARをほとんど発現しないヒト膵癌細胞AsPc1やヒトメラノーマ細胞A375に発現する表面分子(CD29、CD54など)に対する抗体を付着させたAdv-FZ33による遺伝子導入・遺伝子発現は、コントロール(抗体の非存在下またはコントロールIgG併用でのAdv-FZ33、ならびに野生型Ad5ファイバーAdv-Fwtのウイルス)による遺伝子導入・発現の数十倍に増強できた。また、ErbB2を高発現するヒト卵巣癌細胞(SK-OV3など)への遺伝子導入は、ErbB2抗体の併用により、選択的に著明に(EGFP遺伝子導入細胞%で、5%から90%へ)増強できた。面白いことに、図6に示すように、CD29(インテグリンb1)に対する抗体2種を用いてFZ33ベクターの遺伝子導入効率を評価したところ、HUTS21抗体では効果は弱く、SG19抗体を用いた場合に飛躍的に高い遺伝子導入効果が得られた。このほかにも、同一の抗原分子を認識するさまざまな異なった抗体間で比較すると、大きな効果の差が見られる例が多かった。このような標的化テクノロジーにおいては、標的分子種だけでなく、標的抗原と対応する個々の抗体の特性が重要であろう。
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図1 骨髄幹細胞 (MSC)の分化
図2 ラットMSC細胞のグリオーマへの走化性
図3 アデノウイルスのファイバーの構造
図4 FZ33ファイバー変異型アデノウイルスの模式図
図5 FZ33変異型アデノウイルスを用いた標的化の概念図
図6 EGFP発現FZ33変異型アデノウイルスと抗CD29抗体を用いた標的化
以上、引用終わり
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