2026年2月8日 日曜日 雪 総選挙の投票日 私は先週に日曜日に期日前投票を済ませてある。
山本周五郎 松風の門 新潮文庫(オリジナルは「現代」昭和15年10月号)
・・「面壁九年ののち、達磨は結跏を解いて起ちながら、かように申したと存じます、なるほど、ただ睨んでいるだけでは壁に穴は明かぬ ・・ 睨んでいるだけでは」と彼は繰り返した、「・・壁に穴を穿つことは出来ぬ、そう申したと存じます」・・真面目くさって云えば云うほど、それはばかげた、埒もない言葉に思われた。宗利は八郎兵衛のとり澄ました顔と、その言葉の愚かしさとの対照の奇妙さに、大学の侍していることも忘れて笑った。そのときもし彼が、八郎兵衛の面(おもて)を見つめている大学の鋭い表情に気づいたとしたら、たぶんそんな笑い方はしなかったに違いない。(同書、「松風の門」新潮文庫版p21)
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・・すべての芸術は人の心をたのしませ、清くし、高めるために役立つべきもので、そのために誰かを負かそうとしたり、人を押し退けて自分だけの欲を満足させたりする道具にすべきではない。鼓を打つにも、絵を描くにも、清浄な温かい心がない限りなんの値打ちもない。・・おやめなさいまし、人と優劣を争うことなどはおやめなさいまし、音楽はもっと美しいものでございます、人の世で最も美しいものでございます」(同書、「鼓くらべ」、「松風の門」新潮文庫版p47-48)

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・・だからおしずさんとあたし(=利休古流の華道教授の絹女)はお相伴みたいで役不足だけれど、熱海なんておいそれとゆける処じゃあないし、・・(同書、『湯治』、「松風の門」新潮文庫版p112)
ーー箱根山がどうしてとんでもないの。 ーーあら知らないの、箱根山から向こうは化物が出るっていうじゃないの。(同書、p115)
補註: この主人公のおしず・・まさにあの有名な『おたふく』のおしずさんだ! 以前、竹下景子氏の朗読ヴァージョン(抄録版)も紹介したことがあった。
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・・「・・こんなに汚れて、世間から嗤われ、鼻っつまみにされてるかもしれねえ、けれども、この女はやっぱりおつうだ、この女が、まだこんな小さいときに、枯れた朝顔の蔓のからまった、竹の垣根の向こうに立って、懐手をして、おれの目を見てにこっと笑ったんだ、そして云ったんだ、ーーあたしつうちゃんよ、・・・おらあ今でも忘れねえ、この女がそう云ったんだ、これはおれのおつうだ」(同書、『ぼろと釵(かんざし)』、「松風の門」新潮文庫版p180)
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たとえ侍でも人間らしい人間なら、ときには家名や対面をけがすようなことに、巻き込まれる場合があるかもしれない。醜聞の広まることを恐れて、ただ問題を闇に葬ろうとするのと、人間としてその問題に正面から対決するのと、どちらが正しく勇気のいることだろうか。
「苅田荘平」のためになにかしよう」と功兵衛は呟いた、罰するだけが裁きではないからな、明日は**へ行って相談しよう」(同書、『醜聞』、「松風の門」新潮文庫版p426)
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