令和7年12月30日 火曜日(風邪のため外に出ず)
辻竜也 徳川吉宗 吉川弘文館・人物叢書 1958年刊(新装版は1985年)

・・亨保四年(1719)つまり前の触れの三年後、当局はまた触れを出して、今後は請願の理由の立つものは審理を認め、理由の立たぬものは早速請願書を返却することに改めた。たとえ願書不受理の場合でも処罰は受けずにすむことになったのである。その翌年老中は三奉行(寺社・江戸町・勘定)に対し、諸請願のうち、諸人一同の御救いになるべきことのみを採用し、他は却下せよと令した。諸人御救いになることは、米穀がよく出来るようにすることと、人々に分限を守らせ冗費を節約させることであると述べている。(同書、p45)

上記の年表はウィキペディアより引用。
・・直訴を制度化したのが目安箱の設置である。亨保六年閏七月幕府は日本橋に高札を立て、八月以後毎月二日、十一日二十一日の三度、評定所外腰掛の内に箱を出しておくから、将軍に直訴したいものは正午迄に、訴状に住所・氏名を明記し固く封をして持参せよと令した。かくて設けられたのが目安箱である(目安とは訴状のことをいう)。箱の大きさは約七十五センチ立方、上は銅板を張り、約六センチ四方ほどの口があけてあり、前部に錠がかけてある。これを側近の役人が吉宗の前に持参し、小姓が鍵をひらき封のまま将軍に渡す。それを吉宗自身開封することになっていた。(同書、p47)
・・特に有名なのは山下幸内(こうない)の上書である。・・彼は亨保六年秋頃吉宗施政批判の投書をおこなった。特に当時幕府がおこなっていた緊縮財政・府庫致富策に徹底的な批判をおこない、これはかえって諸民を困窮させるものだと述べ、吉宗に対し「紀州一国を治めている気質(かたぎ)がまだ抜けていない。天下を統治する人の心とは全く違っている」と極めつけた。結局彼の意見は採用されなかったが吉宗はその正々堂々たる態度を賞賛し、諸役人を集めてこれを見せた。この噂は忽ちひろまり幸内の家には来訪者殺到し、そのためについに転居するに至ったという。(同、p49)
(補註:落語の落ちのようで思わず笑ってしまう記述です。なお、貨幣発行権の意味合いについて、現代人は、MMT現代貨幣理論などをご参照下さい。また、貨幣というものの本質を知るために、もう少し広い視野から勉強したい人は、サイエンスライター北村雄一さんの地球放送 金本位制はなぜ失敗したか? 地球の歴史 その128」などは良い糸口になると思います。)
・・亨保七年には小石川伝通院前に住む小川笙船(しょうせん)という町医者が貧窮の病人のための療養所設立につき投書し、この結果小石川療養所が設立された。(同、p50)

・・しかしやがて旗本・御家人などは投書をすると罰せられるようになり、十年には明瞭に「この箱は百姓・町人のために出すのであって、旗本らが投書するのは心得違いである。もし進言したい時には上司に申出よ。万一上司に申出にくい時には目付へなりとも申出るように」という申渡しが出された。(同、p50)
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・・当局が本格的に積極財政にのり出したのは亨保七年からであった。その原因の一は・・旗本への切米支給すら滞るという財政の悪化であり、一は将軍吉宗の権威が確乎不動のものとなり、その意志を十分幕府の末端にまで徹底させうる態勢が整ったことにある(同書、p72-73)
・・土地がどんどん耕地になってくると、刈敷や厩肥の供給源が少なくなって肥料の自給自足が不可能となる。また耕地が増加すると水が不足してくる。(中略)・・七年になると幕府の新田政策は急に積極的になった。(同、p75)
・・幕府が新田開発にいかに懸命になっていたかは、・・(中略)・・この後亨保時代の末年まで直領(じきりょう)の石高はだんだん増加してゆくが、新田開発がこれに大きく与っていることは言をまたない。(同書、p78)
・・これら増収策と関連して考えねばならぬのがいわゆる殖産興業である。・・・(中略)・・・亨保の財政再建策は専ら農民からの本年貢の増徴に力を注いだのであって、産業の奨励も農民の年貢負担力を増すために行われたものであり、積極的に新しい財源を求めたのではない。(同、p80-81)
・・農産物の奨励として特に有名なのは甘藷の栽培である。(同、p82)
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米価暴落と大凶作:
・・米価暴落の直接の原因は大阪に米が集まりすぎたことにあった。・・・(中略)・・・ 諸藩は財政維持のため少しでも多く貨幣を獲得しようとして、相場にかまわず大阪に米を送った。蔵米として表向き送りこむばかりでなく、一般商品たる納屋物(なやもの)の中にも藩米を交えて送りこんだ。それがこのような供給過多をもたらしたのである。・・・(中略)・・・ (諸藩の)貨幣不足はそれほど深刻なものであった。(同、p97-98)
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