2017年8月28日 月曜日 曇り
ブドウハモグリダニ 学名 Eriophyes vitis Nalepa; 英名 erineum mite
Bettiga, L.J. ed., Grape Pest Management, 3rd ed. pp399-402, Univ. California Agriculture and Natural Resources, Publication 3343, 2013.
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今朝、第4列最北端のソーヴィニヨンブランの葉っぱ数枚で、ブドウハモグリダニの症状を見つけた。葉表に火ぶくれ症状、葉裏の毛茸(もうじよう)が密になって毛氈のようになり、肉眼的には葉裏の白色斑(である。一枚の葉に二三個ずつ見られる(5,6枚の葉っぱで)。
一方、ブドウネアブラムシの症状は葉裏に虫癭。
今回のソーヴィニヨンブランはブドウハモグリダニの症状である。残念ながら、私の実体顕微鏡観察では虫そのものを判別することはできなかった。(補註:ブドウハモグリダニの成虫の写真は、Grape Pest Management のFig77.1, p399 を参照)。従って、あくまでも症状からの診断である。
ソーヴィニヨンブランの一株でこの症状を見つけたので、本圃場全1,300本を見て回ったが、同じ症状のものは他に1本も見つけることができなかった。「葉表の火ぶくれ症状」はとても見つけやすいのである。よって、今が初期だと思われる。「ダニ類は繁殖が早く、密度が高くなると防除が困難になるため、増殖初期の散布が重要」とある。
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参考文献: 果樹病害虫百科第2版ブドウ・カキ p15 農文協 2005年
ブドウハモグリダニ 学名 Eriophyes vitis Nalepa; 英名 erineum mite
葉の症状 葉表・葉裏に突起やゴールが発生する
葉表に火ぶくれ症状ができ、葉裏の毛茸(もうじよう)が太く白色となり数多く見られる。(果樹病害虫百科第2版ブドウ・カキ p15 農文協 2005年;被害葉の写真は、同書p240参照)
ブドウネアブラムシ(同書、p246)
被害葉の写真は同書、p240参照。葉裏に虫えい(虫癭)ができる(同書、p240)。
ブドウハモグリダニの葉の被害とよく似ているが、ブドウハモグリダニの虫こぶは毛氈症状であるので区別することができる。(同書、p246)
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補註 毛氈とは? ウェブ辞書によると・・・
もう‐せん【毛×氈】 獣毛に湿気・熱・圧力・摩擦を加え、繊維を密着させて織物のようにしたもの。幅広物で、敷物に用いる。
補註 虫こぶとは? ウィキペディアによると・・・
虫こぶ(虫瘤、英: gall)は、植物組織が異常な発達を起こしてできるこぶ状の突起のこと。 虫癭(ちゅうえい)ともいい、英語カナ読みのゴールが使われることもある。 それらはさまざまな寄生生物の寄生によって、植物体が異常な成長をすることで形成される。
虫こぶ – Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/虫こぶ
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ブドウハモグリダニの防除適期と薬剤(同書、p577)
発芽前 石灰硫黄合剤 20倍
5月上旬から8月下旬
オマイト水和剤1000倍(収穫14日前まで)
ダニトロンフロアブル2000倍(収穫14日前まで)
オサダンフロアブル1000〜1500倍(収穫21日前まで)
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補註 ネット情報によると・・ http://www.y-marukoh.co.jp/tekiyouhyou.pdf
・オマイト水和剤: 収穫後に使用する。 ボルドー液と近接散布すると効果が劣るので、ボルドー液との 間隔は前後とも1週間とする。
・オサダンフロアブルについて: ボルドー液と近接散布すると効力が劣るので、ボルドー液散布 後は30日間隔をおいて散布する。また、本剤散布後10日間は ボルドー液を使用しない。
・ダニトロンフロアブル、サンマイト水和剤、ピラニカ水和剤、ピラ ニカEWは同一成分とみなし共に使用は避ける。また、目に入ら ないように注意する。■有効成分:フェンピロキシメート ブドウにはハダニ類で登録がある(1,000〜2,000倍、1回、収穫14日前まで)本剤は年1回使用とし、ダニ類の抵抗性を回避するため、他剤との輪番(ローテーション)で使用してください。ダニ類は葉裏に寄生することが多いので、葉裏までていねいに、かけ残しのないよう散布してください。とのこと。(http://www.greenjapan.co.jp/danitoron_f.htm)。
補註 ・・当ぶどう園のようにボルドー液を中心に防除体系を組んでいる畑では、ダニトロンフロアブルなどが使い易いか・・価格は500mlで4,000円強。
補註 ダニトロンフロアブルについて注意点:
■種類名:フェンピロキシメート水和剤
■有効成分:フェンピロキシメート・・・5.0%
■性状:類白色水和性粘稠懸濁液
■毒性:普通物
■有効年限:4年
■包装:500ml×20瓶
■作用機構分類:IRAC 21A[フェンピロキシメート]
ダニ類は繁殖が早く、密度が高くなると防除が困難になるため、増殖初期の散布が重要です。
本剤は静置時は粘度が高いが、振れば粘度が下がるので、使用前には数回軽く瓶を振ってから使用する。
本剤は植物体への浸透移行性がないので、かけ残しのないように葉の裏表に十分に散布する。とのこと。http://www.greenjapan.co.jp/danitoron_f.htm
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補註 mildew という言葉について・・
Powdery mildewとは? うどんこ病(うどんこびょう)は子嚢菌のウドンコカビ科の純活物寄生菌による植物病害の総称。ブドウ、麦類(コムギ、オオムギ)、野菜などの重要な病害である。
Downy mildew となると・・べと病(べとびょう)は露菌病とも言い、卵菌(ミズカビと呼ばれる水生のものが多く知られ、またかつては藻菌類に分類されていた)のうちPeronosporaceae科に属する菌による病害に対して名づけられる植物病害で、ブドウや野菜で特に重要な病害である。湿度が高い時(特に梅雨時など)に蔓延しやすく、このような時期にはべとついた感じになるので「べと」と呼ばれるが、一般には葉などに褐色の斑点が現れて広がり、進行すると表面に分生胞子を形成するため羽毛状を呈する。
補註 フシダニ Eriophyidae; gall mite ウェブ辞書によると・・
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説
クモ綱ダニ目フシダニ科に属する種類の総称。体長 0.2mm内外の微小種。体は細長く,円筒形で,前端部を除く体の大部分は表面的な多数の環節から成る。歩脚は2対。植物の葉,茎に寄生し,農業害虫として見逃すことができない。植物に丸い虫癭をつくらせる型と,葉の表皮にもぐり込んで短毛を密生させる型とがある。後者の型による加害によって葉は褐色化ないし黒変し,落葉が早まる。本科には,柑橘類を食害するミカンサビダニ Aculops pelekassi,ブドウの葉に寄生するブドウハモグリダニ Colomerus vitisなど 50種が知られている。
世界大百科事典 第2版の解説 フシダニ
フシダニ科Eriophyidaeに属するダニの総称。体型はうじむし状。微小なダニで,体長は成虫で0.2mm内外。体色は乳白色,淡黄色,橙色など種々である。脚は2対だけで短く,末端には羽毛状の付属物(羽毛づめ)がある。体の大部分には多数のリング(擬体節)がある。体毛の中で後端部の1対は長大で,むち状。種によっては雌成虫に2型がある。植物寄生性のダニ類で,農作物の害虫も少なくない。しばしば,植物の寄生部位に顕著な変形物(虫こぶ,ふし)をつくる。
日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 フシダニ ふしだに gall mite
節足動物門クモ形綱ダニ目フシダニ科Eriophyidaeのダニの総称。微小なダニで体長は0.2ミリ内外。ほかのダニ類と異なり体がうじ虫状、後体部に多数の環節様の構造(真の体節ではない)をもつ。成虫でも脚(あし)は二対しかないなど、きわめて特異な形態のダニ類である。生活環は卵のあと幼虫期を欠き、2回の若虫期が続く。雌には二型があって、雄に似た正常の雌(第一雌)と、雄とは形態が異なった休眠型の雌(第二雌)とがある。雄は挿入器をもたないので、精子の転送は間接的方法による。すなわち、雄は葉面に精包を産み落とし、雌はそれを取り入れる。フシダニ類は寄主植物の加害部位や植物被害様相によって、葉に虫こぶをつくるgall mite、葉肉組織を海綿状にするblister mite、芽を加害するbud mite、葉裏に毛旋(もうせん)状の毛を密生させるerineum mite、葉や果実を加害して銹(さび)色にするrust miteがある。日本では柑橘(かんきつ)類につくミカンサビダニ(単にサビダニともよばれる)、クコにつくクコフシダニ、ブドウにつくブドウハモグリダニなどが重要害虫である。フシダニ科のダニでは植物ウイルスを伝搬することがある。
参考 フシダニの分類と生態
http://www.jppa.or.jp/shuppan/images-txt/2003/2003_0901.pdf
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