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自然科学的世界像: それぞれの人間が一回かぎりのこの現世そのものを主体的に引き受け、肯定して生きるという実存的な態度を否定する危険をはらんでいる

2024年3月17日 日曜日 曇り

小浜逸郎 頭はよくならない 洋泉社 2003年

小浜逸郎 やっぱりバカが増えている 洋泉社 2003年

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 ・・キリスト教的な自然観は、ヨーロッパ中世の「神」の秩序観念の衰微に成り代わって、自然科学的世界像を生み出し、西欧近代の繁栄を生み出す要因のひとつとなった。そのがぎりで、これが強大な影響力をもってきたことは否定すべくもないが、同時に、私たちは、この巨視的、客観的な世界像が、じつは、それぞれの人間が一回かぎりのこの現世そのものを主体的に引き受け、いかなる飛躍した超越的な観念にも託さずに、それ自身において肯定して生きるという実存的な態度を否定する危険をはらんでいることも見ておかなくてはならない。

 自分は死んでもその肉体は巨大な生命連鎖の一部として循環のプロセスに組み込まれる、といった「物語」は、人間は遺伝子の乗り物にすぎないといった考えと同じように、一見現代的な意匠をまとってはいるが、現世否定の宗教思想と構造的には変わらないのであって、その意味で、科学的知識に素材を借りた単なる「信仰」に他ならない。私たちは、時代のイデオロギーからまったく自由に生きることはできないが、その支配的なパラダイムに対する懐疑と批判の精神だけは失ってはならないのである。(小浜、『やっぱりバカが増えている』、p68)

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補註: アイキャッチ画像はQueen Christina of Sweden (left) and René Descartes(Wiki Commonsより引用)

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