biology

Dawkins, The Blind Watchmaker

 

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Richard Dawkins, The Blind Watchmaker, first published by Longman 1986, reissued with an introduction 2006 Penguin Books.

ditto, read by Richard Dawkins and Lalla Ward, BrillianceAudio no Compact Disc, unabridged, 2011.

2015年1月15日 木曜日 読了 いつものドーキンス本である。が、いつもながら非常にわかりやすい英語、そしてその語り口がすばらしい。ララ・ウォードさんとの読み合わせの受け継ぎも絶妙で、オーディオブックで聴いていてそのまま理解できる。

内容に関しては、すでに30年近くも前のものになってしまったために、やや新鮮味に欠ける。というのも、私のように生物学を専門にして学生にも教えてきたものにとっては、この本で書かれている多くの概念がすでに当たり前の基盤知識になってしまっているからである。

たとえば、木村資生さんの中立説もドーキンス本で実に正当に詳しく叙述されていて感心する。対照的に、最近の分子生物学の教科書では中立説は常識となってしまって、木村さんの名前が紹介されることがない。私などは教科書を教えているうちに Kimura の名前がでないままに中立説の叙述を見つけると嬉しくなって学生に思わず木村資生の名前を教えてきた。が、それも今に古くさい行いに思われるようになろう。そしてそのうちに二重らせん構造さえも常識となってワトソン・クリックの名前も忘れ去られる。それがむしろ当然で、科学者名利としなければならぬ。

この目まぐるしい分子生物学成熟の30年の年月を経ても、ドーキンスの叙述の正確さは遜色なく素敵である。扱う内容とその位置づけ考察において古びてしまうこと obsolescence が全くない。ヒトゲノム・プロジェクトなど30年前には想像もできなかったであろうほどの膨大な知見の蓄積に基づいても、この本に書き直すべきことを見つけない。むしろ30年前にこれほど上手に考察されまとめられ予言されていたことに驚く。多くの遺伝学者・発生生物学者はここで叙述されているような既定のレールの上を安心して走ってきていたのではないかとむしろいぶかしく思われるのである。

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