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上田秋成 鵜月洋訳注 雨月物語 角川ソフィア文庫 平成18年
・・「雨月物語」は、題材からみれば時代小説であった。作品でとりあげた「時代」は、おおむね「中世」であった。なかに近世の出来事とおもわれるものも一二ないではないが、それとても本質的にはけっして近世的現実や近世的性格をもつ題材ではなかった。
秋成がことされ中世的題材をえらんだ意図は、徳川封建社会の支配をうけない時代を設定することによって、儒教的封建道徳や管制の思想と真正面から対立することを極力回避しようとしたからにほかならない。ようやく国学的な世界観や人間観を身につけた秋成にとって、近世という歴史的現実からは、純粋も美も理想も、これをもとめることは不可能であった。歪められた現実、押し潰された人間性、枠に嵌めこまれた生活・・そうしたものから眼をそむけて、はるかな時間的かなたをながめたときに、はじめて自己に忠実な世界、自己の抱懐するファンタジーの次元が構想されたのである。時代小説のひとつの重要な意義がここにあるとともに、それは「雨月物語」を怪異小説に仕立てた意図と軌を一にするものでもあった。(鵜月、同書巻末解説、p347-348)
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・・「雨月物語」は、時代・怪奇小説の形式のなかに、歴史・友情・夫婦・芸術・愛執・金銭などの問題に対して、当時の凡俗の見解を相対化するような秋成の考え方が投影されている。・・・(中略)・・・つまり、世間的な意味で何者にもなることなく、俗世におもねって文事に携わることを拒んだ点、終生一貫していた。このように自己の人生を自分だけのものとして生きたその精神が、江戸期には珍しい「個」を作品に描く原動力となった、と見てよい。(井上泰至、同書巻末解説、p358)
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