culture & history

アメリカの開戦手続き

2021年11月19日 金曜日 曇りのち午後1時頃から雨

神野正史 「覇権」で読み解けば世界史がわかる 祥伝社 平成28年(2017年)

アメリカの開戦手続き① アメリカは、戦争口実を得るためなら、多数の国民の命を犠牲にすることも厭わない。

アメリカという国は、良きにつけ悪しきにつけ「徹底した民主国家」です。

したがって、国民の同意なく物事の決定はできませんから、政府が開戦を欲したとき、かならず国民が納得するような戦争口実を探します。

それが見つかればよし、もし見つからなければ「挑発」「因縁」「誘導」「捏造」(註41)など、ありとあらゆる裏工作を講じ、その際、自国民の命を大量に犠牲にすることなどまったく厭いません。

(註41)具体的に例を列挙すれば、挑発なら「ペリーによる江戸湾侵入」など、因縁なら「米韓メイン号爆沈事件」など、誘導なら「真珠湾事件」など、捏造なら「第二次トンキン湾事件」など(補註a)(神野、同書、p285)

補註a さらに最近の例を挙げていくなら、「イラクのクウェート侵攻と湾岸戦争(父ブッシュ大統領時代)」は誘導、「911事件(子ブッシュ大統領時代2001年)」は捏造、次の「アフガニスタン侵攻」は因縁、次の「イラク戦争」は捏造(大量破壊兵器など)。「リビア空爆とカダフィー大佐殺害(2011年)」は誘導(カラー革命による内戦誘発)と因縁(武力介入空爆)。

補註b ただ、911事件以後の「対テロ戦争」関連では、「国民が納得するような戦争口実」を「正々堂々と」画策するのではなく、傀儡軍事勢力(たとえばアルカイーダあるいはISISなど)による内乱誘導(実は内乱ではなく傀儡〜傭兵勢力による代理戦争)の形をとって、アメリカ自身による宣戦布告の形をとらない形になっている。従って、戦争口実を国民に示す必要がないとされた場合も多い(たとえばウクライナ紛争。たとえばいわゆるシリア内戦)。そういう意味では「良きにつけ悪しきにつけ徹底した民主国家」であったアメリカが変質していると感じておられる方々が多いのかもしれない。「民主国家」から強力な武力を背景にした「プルートクラシィー好戦国家」への「衣替え」と称すとよいだろうか。もっとも、「最近の変質」(たとえば、「ブッシュ(911の子ブッシュ)が変えたアメリカ」などの標語表現はアメリカという国の本質を見誤りやすく、もともと建国当初(ワシントンやジェファーソンの時代)から括弧付きの「民主国家」であったと認識した方が史実を洞察できる正しい見解であろう。

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