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植物の体の中では何が起こっているのか

2017年1月1日 日曜日 (曇りのち)晴れ

嶋田幸久・萱原正嗣 植物の体の中では何が起こっているのか 動かない植物が生きていくためのしくみ ベレ出版 2015年

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葉は強すぎる光が苦手ーーー光阻害と葉緑体の定位運動
・・じっと動かないように見える植物ですが、葉の向きを変え、葉緑体の位置を変え、活発に動いているのです。(同書、p70)
 さらにさらに、葉緑体の中ではもっと素早い動きが起きています。・・突然の雲によって光が弱くなると、「アンテナ複合体LHC」の一部が「光化学系I」から「光化学系II」へ移動します。・・光合成の反応では
「光化学系II」が先に働き、そこに「アンテナ複合体LHC」を多く集めたほうが、光エネルギーを効率的に得られるようになるからです。
 「ステート遷移」と呼ばれるこの仕組みのおかげで、太陽が降り注いでいるときも、突然、入道雲が出てきて日が陰ったときも、最適な速度で光合成を行う事ができるのです。(同書、p70-71)

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葉っぱはなぜ緑色か?
葉が光合成に使うのは、主に太陽光に含まれる「赤色光」と「青色光」です。「緑色光」の一部は光合成に使われますが、残りは光合成に使われず、葉をすり抜け、あるいは反射して周囲に散乱します。人間が葉を緑だと感じるのは、その使われない「緑色光」を見ているからなのです。別の言い方をすると、葉が緑に見えるのは、葉が緑以外の色の光を吸収し、光合成をしている証でもあるのです。(同書、p76)

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植物には、生まれながらの「向き」がある
 成長促進物質のオーキシンは茎の先端でつくられ、下へ下へと送られます。この方向は、重力の影響を受けません。・・細胞によるオーキシンの一方向への能動的な輸送を、オーキシンの「極性輸送」と呼びます。(同書、p130-131)

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ヒトと似ている植物の平衡感覚
 根の先端、「根冠」が重力を感じることができるのは、「根冠」の中央部に位置する「平衡細胞(コルメラ細胞)」にそのための仕組みがあるからです。その細胞の中に、相対的に重い物質があり、「平衡石」として働いています。(同書、p136) 植物の根における「平衡石」の正体は、「アミロプラスト」という細胞内小器官です。このアミロプラストは葉緑体(クロロプラスト)が根にあるときの形態で、デンプンの粒をたくさん蓄えています。それが、「平衡細胞」の中で重力の影響を受けて居場所を変え、細胞を刺激することが、根における重力感知の仕組みと考えられています。・・根が曲がるのも、幼葉鞘が曲がるのと同様、オーキシンの分布に偏りが出るのが原因です。(同書、p137)

・・ここで注意が必要なのは、オーキシンは濃度によってその作用が変化することです。一般に、濃度がそれほど高くない状況では、オーキシンは成長促進物質として働きますが、高濃度になると成長を抑制することが知られ、さらに根と茎では、成長の促進と抑制を示す濃度に違いがあります。茎(幼葉鞘)の「光屈性」では、光の反対側でオーキシン濃度が高まって成長が促進され、光の方向に屈曲が起きるのに対し、根の「重力屈性」では、根の下側でオーキシン濃度が高まり成長が抑制され、根は重力の方向に屈曲します。(同書、p140)

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・・これらの「屈性」や「傾性」に見られる植物の動きは、主に「偏差成長」という現象によって引き起こされます。・・こうした「偏差成長」によって起こる植物の動きを「成長運動」と呼びます。(同書、p146-147)

お辞儀や就眠を引き起こすメカニズムーーー浸透圧と膨圧運動
 それに対して、ネムノキ(マメ科)の「就眠運動」やオジギソウ(ネムノキの仲間)の「接触傾性」は、「成長運動」とは異なる「膨圧運動」という仕組みで引き起こされています。(同書、p147)

気孔の開閉
「孔辺細胞」の「膨圧」の変化を引き起こすのは、ここでも細胞内のカリウムイオンの増減です。(同書、p153)

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