2025年7月12日 土曜日 晴れ(暑さおさまる。ここ数日、風が爽やかな一日が続く、ぶどうの花殻落としに専念)
星新一 きまぐれ星のメモ 角川文庫17682(星新一の第1エッセイ集;単行本は1968年刊)
SFにはいろいろな要素があり、各人の主張は多様だが、私は事態を全く別な角度から見なおさせてくれる作品に接するのを好む。「素晴らしい風船旅行」という映画以来、空中からの写真が雑誌によくのるようになった。日常見慣れているものが新鮮な姿の一面を示してくれ、たのしさが味わえる。それと似たような感じである。(同書、p67)
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・・メモの山をひっかきまわし、腕組みして歩きまわり、溜息をつき、無為に過ぎてゆく時間を気にし、焼き直しの誘惑と戦い、思いつきをいくつかメモし、そのいずれにも不満を感じ、コーヒーを飲み、自己の才能がつきたらしいと絶望し、・・けっして気力をゆるめてはならない。
これらの儀式が進むと、やがて神がかり状態がおとずれてくる。といっても、超自然的なものではない。思いつきとは異質なものどうしの新しい組合わせのことだが、頭のなかで各種の組合わせがなされては消える。そのなかで見込みのありそうなのが、いくつか常識のフルイの目に残る。さらにそのなかから、自己の決断で最良と思われるのをつまみあげる一瞬のことである。分析すれば以上のごとくだが、理屈だけではここに到達できない。私にはやはり、神がかりという感じがぴったりする。(星、同書、p69-70)
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・・私の統計によると、きまった型から出たがらない、思考の開放恐怖症の人があるわりあいで存在することはたしかである。まずその殻を破る作戦をねり、同時に小説を書かなければならないのだから、SF関係者はまだ当分は苦労を覚悟すべき状態のようである。(同書、p68)
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・・アイデアというと、天来の啓示の如く出てくると思っている人があるが、私に言わせれば、得られるものでなく、育てるものである。雑多な平凡な思いつきを整理し、選択し手を加えることに精神を集中してつづければ、なにかが出てくるのは確実である。(同書、p85)
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