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飛行機の運動方程式:常微分方程式のはなし

2016年7月6日 水曜日 曇りのち晴れ

鷲尾洋保 微分方程式のはなし 変化をとらえるテクニック 日科技連 1996年

しばらく途中になっていた鷲尾本を通読。前回読んだ「複素数のはなし」でもそうであったが、飛行機の運動の数学が殊に突っ込んで解説されており、興味深く勉強させていただいた。

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この本では、微分方程式を現象を解く道具として考え、常微分方程式(この本では偏微分方程式は扱っていない)を次のような方法で解くことを考えてきました。
(1)変数分離形として積分で解く
(2)定数係数の線形微分方程式をラプラス変換を応用して解く
(3)それでも解けない微分方程式をルンゲ・クッタ法をもちい、コンピュータで解く
また、微分方程式を解く補助的な方法として、
(a)部分分数に分解する手法・・・この方法は、積分を実行する場合とラプラス逆変換をする場合有効。
(b)微少変動の理論・・・この方法により、複雑な微分方程式が簡単な式に近似できる場合がある。(以上、鷲尾、同書あとがき、p217-218より抄)

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ダッチロールはこうして起こる: 飛行機の運動方程式
1985年8月、日航機が群馬県上野村の山中に墜落し、520人が死亡するという悲惨な事故がおきました。このとき、この飛行機は途中で垂直尾翼が吹っ飛んだため、「ダッチロール」におちいり、操縦不能になったといわれています。・・ダッチロールという飛行機の運動は、決して異常なものではなく、どの飛行機にもあるものです。そして、まさに、線形微分方程式で解くことのできる最適の例です。 そこで、ラプラス変換を利用して線形微分方程式を解く最後の問題として、飛行機の運動を考えようと思います。  飛行機は、空中に浮かんでおり、前後・左右・上下に運動するため、今までの例よりも複雑です。また、飛行機に加わる外力は、重力・エンジンの推力のほか、周りの空気から受ける空気力があり、これもなかなか複雑です。・・・以下、略・・・(鷲尾、同書、p162)

垂直尾翼があり、方向舵も健全ならば、たとえ外乱により一時的にこのような運動がおきても、それを制止できますが、垂直尾翼がなくなってしまったらどうしようもありません。外乱は絶え間なく押し寄せます。線形微分方程式の例題として、ダッチロールを取り上げましたが、当時の乗客の方々の心中をお察しして余りあります。(鷲尾、同書、p181)

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補注 日航123機墜落事故

微分方程式の数学からは逸れてしまうが、日航123機墜落事件について。その全貌は未だ明らかになっていない。

歴史家(現代史家)はこの事件を歴史書にどう記せば正しい記載になるのだろうか。

たとえば、科学技術研究という一点だけから見ても、大きなものを失った。すなわち、亡くなった方々の中には、我が国を代表するような神経学(神経可塑性)研究者も含まれていた。また、国産の優れたOS・トロンの開発者など、我が国の学術・技術開発の将来を担う多くの人々も喪った。

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2016年6月15日 水曜日 曇り・肌寒い

鷲尾洋保 微分方程式のはなし 変化をとらえるテクニック 日科技連 1996年

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語意メモ: 微分方程式の次数
微分方程式の次数は、その式に含まれる最高の階数の導関数の次数をいいます。(鷲尾、同書、p16)

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語意メモ: 次元
物理現象では特に次元を間違わないようにすることも大切です。次元とは、ある物理量が、長さ、質量、および時間の3大基本要素の、どういう組み合わせでできているかを示す値で、単位とも密接に関係しています。・・・(中略)・・・ 微分方程式を作る場合、左辺、右辺および各項の次元または単位がそろっているかをよくチェックしておくことが大切です。(鷲尾、同書、p23)

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補注 語意メモ: 常微分方程式と偏微分方程式
常微分方程式 独立変数が1つの場合の微分方程式
偏微分方程式 独立変数が2つ以上ある場合の微分方程式

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