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張作霖爆殺・ソ連犯行説を追う

2022年12月20日 火曜日 晴れ(風はないが、氷点下続きで、家の中もひどく寒い)

福井義高 日本人が知らない最先端の世界史 不都合な真実編 祥伝社黄金文庫814 令和3年発行

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張作霖爆殺・ソ連犯行説を追う(福井、同書、p34〜)

 ・・ドミトリー・ヴォルコゴーノフの『トロツキーその政治的肖像』(生田真司訳)に記された、レフ・トロツキー暗殺を指揮した伝説の秘密工作員ナウム・エイチンゴンに関する一節である(邦訳下巻417頁)。

 極東とアメリカ事情にずばぬけて強い。「張作霖」事件に関連したエピソードを持ち、当地でブリュッヘルを救い出している。

 ソ連時代末期には国防省軍事史研究所の所長、ソ連崩壊後はボリス・エリツィン大統領の顧問を務めたヴォルコゴーノフ大将が、職責上、特別にアクセスできる機密文書に基づいて書いたトロツキー伝の記述の信憑性は高い。しかも、トロツキー暗殺と直接関係ないにもかかわらず、あえて「『張作霖』事件」に触れたことの重みは、ソ連犯行説を否定する論者といえども、無視できないであろう。・・・(中略)・・・「ヴォルコゴーノフ氏は・・トロツキー・・の死因を調べている際に、偶然、張作霖がソ連軍諜報局によって暗殺されたことを示す資料を見つけたのだという」と(加藤氏の『謎解き』で)記していた。・・・(中略)・・・なお、『マオ』の張殺害ソ連犯行説も、『GRU帝国』に依拠して書かれている。GRUとは「赤軍情報局」の略称で、軍の対外情報機関である。  おそらく、活字では明らかにできなかった、もっと踏み込んだ内容をヴォルコゴーノフは周辺に語っており、それが、プロホロフらロシア人研究者によるソ連犯行説の基礎にあると思われる。  いずれにせよ、張作霖爆殺がソ連の仕業だとしたら、その中心にいたのは、エイチンゴンである。(福井、同書、p36-37)

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 ・・この事件では、爆破によって車両の天井部分は滅茶苦茶になったのに対し、台車部分や線路はほとんどダメージを受けていない。通説である関東軍犯行説は、河本大佐らの爆薬は、京奉線の線路脇に仕掛けられたとしており、車両の被害状況と辻褄が合わない。一方、シャラポフが言うように、満鉄線の高架橋に爆薬が仕掛けられていたとすれば、被害状況は無理なく説明できる。(福井、同書、p39)

 ・・関東軍とは別に、ソ連工作員が高架橋の下(あるいは『謎解き』で加藤氏が主張するように、列車の天井部分)に爆薬を仕掛けていたと考えれば、通説と被害状況の矛盾も解消する。(福井、同書、p47)

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補註: 伊藤博文公が暗殺された時も、致命傷の弾は、犯人とされている人の銃から発射されたものではなかったことが明らかになっている。ただ、真犯人は明らかになっていない。JFK暗殺も、周知の通り、オズワルドが撃ったためではない(そして周知の通りオズワルドは拘置所で殺害・消されている)。今年の安倍晋三元総理暗殺事件は私たち日本国民にとって、本当にショックな出来事であった。この致命弾も、犯人とされている人の銃から発射されたものではなく、別の方向から発射されて安倍氏の首から胸部へと到達したと考えられることが法医解剖者によって報告されており、その弾は公には「紛失した」とされている。

 JFK暗殺事件の資料は75年間の封印とされていて、もう15〜16年ほどもすると(正確には2038年頃に)公開されるかもしれない。(ただし、私見にはなるが、封印再延長ないし紛失気づきなどで、結局は公開されないで終わる可能性も心配される。)  一方、「弾」が見つからないとか、決定的瞬間の画像資料のカットなどとか、今年の報道の経緯を慮ると、これも私見ではあるが、安倍氏暗殺の真犯人は解明されないままに有耶無耶にされてしまうのではないかと危惧される。これでは安倍氏も浮かばれない。また我が国の守りや人々の安全も維持できない。このようなこと(暗殺・そして有耶無耶の処理)があってはならない。科学的・合理的な徹底的捜査と犯行者(犯行団体等)が必須である。亡くなられた安倍氏や家族のためにも、私たち国民のためにも、(ひいては世界の平和のためにも)是非ともそうあるべきである。(2022年8月2日付けで https://quercus-mikasa.com/archives/12912 にも関連記事を掲載しました。ご興味ございましたらどうぞご覧ください。)

 補註: 「誰が張作霖を殺害したかは、まだ確定していない(福井、同書、p38、p47)」。「関東軍の仕業というのが、日本の歴史学界では「決定的」通説となっており、日本による中国「侵略」の第一歩とされることも多い(福井、同書、p34、一部HH改)」。 この歴史的に重要な暗殺事件に関しても、国内外の複数の歴史研究者の深い資料発掘と検討、そして合理的・実証的な再検証が大切であり、私はこれを期待している。

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