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自信をくじかれ、混乱し、シニカルで、信仰を持たず、生気を失った病的社会。

2024年3月26日 火曜日 曇り

ドストエフスキー 悪霊 亀山郁夫訳 光文社古典新訳文庫 2011年

 「土台をシステマチックに揺るがすためです、社会とあらゆる原理を、システマチックに解体するためです。すべての人々の自信をくじき、すべてをごった煮に変え、そのようにして揺らぎだし、生気を失った病的社会を、シニカルで、信仰をもたず、それでもなおかつ、何やら支配的な思想や、自己保存をどこまでも渇望する社会を、いきなりわが手に収めるのです。反旗を掲げ、五人組のすべての網の目を拠り所として、です。そのあいだも彼らは活動し、オルグをつづけ、実際的にあらゆる手段を探し求め、どんな弱点にもつけこんでいくのです」(ドストエフスキー 悪霊 同訳書3、p512)

 ・・提出できたのは、(中略)ピョートルが自分の手で書いた今後の行動システムの発展計画案だけだった。『土台を揺るがす』というくだりは、句読点ひとつおろそかにせず、リャームシンが一言一句この文書から引用していたことがわかった。(ドストエフスキー 悪霊 同訳書3、p513)

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 ・・反対にほかの連中などは、ピョートルの持つ鋭敏な能力こそ否定はしないが、彼が現実についてはまるで無知で、おそるべき抽象癖の持主であること、また彼の精神が一方向に鈍くゆがんで発達していること、それは、そこから生じる異常なまでの軽薄さと紙一重であると見ている。彼の精神面については、衆目の一致するところであり、その点に異を唱える者はだれひとりいない。(ドストエフスキー 悪霊 同訳書3、p518)

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 ・・ここに引用するのは、ヨーロッパ的教養を完全に身につけながら、ロシア語の読み書きを十分に学ぶことなく終わった、ひとりのロシア人貴族の子弟(=ニコライ・スタヴローギンからダーリヤ宛て)の手紙である。(ドストエフスキー 悪霊 同訳書3、p520)

 ・・あなたのお兄さん(=ダーリヤの兄のシャートフ)が、ぼくにこう言ったことがあります。おのれの大地のとつながりを失うものは、自分の神も、つまり、自分のすべての目的を失う、と。(ドストエフスキー 悪霊 同訳書3、p524)

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Great Famine of 1601, a 19th-century engraving。Great Famine in Moscow in 1601。

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Marx(1818〜1883) 1867

補註: 上記の肖像が1867年ということなので、この「悪霊」(連載は1871年に始まった)そしてドストエフスキー(1821〜1881)とほぼ同時代である。この『悪霊』ではロスチャイルド(ロートシルト)の名前には言及されないけれども、この小説の時代背景は、まさに彼らの巨大な資本の力でロシアのなかに鉄道の網の目が次々と張り巡らされて行きつつある時期にぴったり重なる。そして、日本は幕末明治維新、激動の時代であった。

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