culture & history

夢は禍悪の前兆とされていた

白川静 中国古代の民俗 講談社学術文庫484 1980年

2015年11月25日 水曜日 雪のち晴れ

夢という字も、その上部は眉の形である。それは眉の外魂が、夜中に人を襲って、種々の衒惑(げんわく)を行うものとされたのであろう。(同書、p177)

 衒惑の衒も、のちに作られた玄の形声字であるらしく、そのもとの字と考えられるものは、行の間に眉女を梟磔した姿をかいたものがそれであろう。道路において、人を衒惑する呪術を行うことを意味する字であったと思われる。
 卜辞には畏夢(いむ)のことをいうものが多く、それは人が牀上でうなされている姿にかかれている。その字をかりに夢と釈しておく。いわゆる夢魔 nightmare である。・・・(中略)・・・夢はおおむね禍悪をもたらすもの、その前兆とされていたようである。堂々たる古代王朝の聖王たちも、この姿なき夢魔におびえ、おそれざるをえなかった。(同書、p177−178)

夢といえば、いまの語感では楽しいものを予想させる。しかしおそるべき眉蠱(びこ)の世界に住んでいた古代の人びとには、それは死への予感でさえあった。自然界はかれらにとって、あまりにも神秘にみちていたからである。(同書、p179)

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眩惑 ゲンワク 目がくらんでまどうこと。また、人の目をくらませ、まどわせること。「奇を衒(てら)い、衆人を―させる」

梟磔 きゅうたく

畏れかしこむ・ おそれ畏む ・ 恐れかしこむ ・ 恐れ畏む 

牀:漢字の成り立ち 爿 以下、「風船あられの漢字ブログ」 http://huusennarare.cocolog-nifty.com/blog/2013/11/post-b050.html より引用:
爿(丬)、状、牀(床)、壮、荘(庄)、装、将、奨、醤、牆という『単語家族』について説明します。基本の漢字は『爿』(省略形は丬)で、読み方は『ショウ』、意味は『ベッド・几』、『長い』、『建築中』です。
 『爿(ショウ)』qiangは、長い木・建築中の板を表した象形文字です。『ベッド』、『几・台』、『長い』、『建築中の板』、『建築中』などの多くの意味があります。
 音読みは漢音が『ショウ』、呉音が『ソウ』です。漢字の部首は『爿(ショウ)』です。『爿』は常用漢字から外れています。
 建築に使う板を『爿』といいます。版築(ハンチク)といって、板の間(あいだ)に土や石灰を入れて叩いて固める建築方法です(現在では土ではなくコンクリートを流しいれます)。 厳密に言うとこの板の左側が『爿(ショウ)』qiangで右側が『片(ヘン)』pianです。丁度左右対称のデザインになっていることが解ります。『爿』は『木・ベッド・長い・大きい』関係の漢字、『片』は『片側』を示すように漢字に変化していきました。<以上、引用終わり>

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