literature & arts

永久に続くかのような深い黙想にすべてを委ねた者の安らいだ表情があるばかりだった。

2023年2月24日 金曜日 曇り

中島賢二編訳 コンラッド短編集 岩波文庫 2005年

 ・・そう理解してよいかもしれない。だが、わしにはよくわからない。たぶん、トマソフ自身にしても、よくわかっていなかったのではあるまいか。だが、・・・(中略)・・・トマソフは士官の頭というより、足に近いほうに片膝をついていた。トマソフは帽子をとっていた。だから、彼の金髪が、おりしも降り始めた粉雪の中で金色に輝いていた。トマソフはそのとき、優しく思いを込めて瞑想しているような姿勢で、死体の上に屈み込んでいた。そして、伏し目になった若々しい純真そのものの顔には、悲しみ、厳しさ、恐怖の表情は一切なく、永久に続くかのような深い黙想にすべてを委ねた者の安らいだ表情があるばかりだった。(コンラッド、『武人の魂』、同訳書、p380-381)

Joseph Conrad

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