philosophy

カントの倫理学には人間存在をそのあらゆる特性から総体としてつかむ人間学的な視点が前提とされていない。

2024年2月20日 火曜日 曇り

小浜逸郎 倫理の起源 ポット出版プラス 2019年

**

「よい」についてのニーチェの発想

 ・・「優劣」の概念を「よい・悪い」に加えるべきだというここでの提案は、ニーチェの影響を受けたものである。(以下略)(小浜、同書、p200)

 ・・カントにとっては、道徳的な「善悪」と、個人の感情や運命としての「快・不快」「幸・不幸」との二元的な対立関係だけが問題であり、前者が後者に優先する(価値として高い)ことをひたすら主張すればよかった。だがそれは何ら「証明」ではなく、ニーチェの先の指摘のとおり、どこまで行ってもただの「信仰告白」である。それをあたかも「証明」であるかのように見せているのは、「理性批判」という近代的な叙述の形式によるのである。(小浜、同書、p202)

総体としての人間学的視点の欠落

 ・・見落としてはならないのは、カントの倫理学には人間存在をそのあらゆる特性から総体としてつかむ人間学的な視点が前提とされていないという点である。これはただ、徳と福、善と快とを非妥協的な対立命題として立てて人間をとらえるという単純素朴な方法から帰結する必然的な欠陥なのだ。(小浜、同書、p202)

**

*****

*********************************

RELATED POST