2024年2月20日 火曜日 曇り
Garshin 1885 wikimediaより引用
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ガルシン全集 全１巻 中村融訳 清娥書房 1973年
・・今ではもうこのお祖母さんも亡くなってしまった。今年は、年寄りばかりでなく、ずいぶんたくさんの人たちが死んだ。俺が死んでも、不思議じゃなかった。それが当然だと断言してもいい。だが、俺は持ちこたえた。諸君、人間はどれほどの悲しみに耐え得るものだろうか？ ご存知ありませんか？ 俺もじつは知らないのだ。
光栄のいたりだ。マーシャは俺に英雄になれと命令した。そこで、俺は兵隊に行かなければならなくなった。 十字軍の遠征時代は過ぎ去り、騎士は姿を消してしまっていた。だが、もし愛する乙女が君に向かってーー『この指輪はあたしなのよ！』と言って、それを火事の火の中へ、・・大火事の中へ投げたとしたらーーはたして諸君はそれを取りもどそうとして身をおどらせないだろうか？ーー・・・（中略）・・・そうすれば、その女は、もうあんなものはいらないのよ、この方が高い指輪なんでしょ？ とでも言うというのか？ 俺は断じてそうは思わない。もっとも、俺は君たちとは場違いの人間だからな、読者諸君。諸君のお気に入りの女なら、あるいはそんなこともしようさ。諸君はおそらく数百株もの株主かもしれないし、『グレーゲル会社』あたりの役員かも しれない。（以下略）（ガルシン、『ごく短い小説（原著は1878年）』、同書、p59）
・・君には解ってもらえまい。現代にも善と誠のあることを信じない君には解りっこはない。自分一個の不幸よりは三人の人間の不幸を選ぼうという君なのだ。（同上、p62）
・・俺と一緒に嵐や、鐘の音や、この義足の響きに耳を傾けてくれたら、もし君が、この冬の夜の俺の心中を察してくれたら、君にも信じてもらえるに相違ない・・。（同上、p62）
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