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東條英機 東京裁判宣誓供述書 を読み解く

2022年12月23日 金曜日 雪(窓外は荒れ。横殴りの雪;室内は手元の温湿度計で18℃、湿度60%、ダウン上下を着て過ごしている。)

渡部昇一 東條英機 歴史の証言 東京裁判宣誓供述書を読み解く 祥伝社黄金文庫519 平成22年(私の持っているのは初版第3刷); 同、単行本 平成18年(私の持っているのは初版第1刷)

田中正明 新版 パール判事の日本無罪論 小学館新書 2017年(オリジナルは1963年に慧文社より刊行された『パール博士の日本無罪論』を、改訂文庫版『パール判事の日本無罪論』小学館文庫、2001年刊 をもとに新書化したもの。私の持っているのは新書版) 眼に疲れを覚え易い今の私は、朗読版(菅原拓真朗読、Audible版、2018年)を1.2倍速で聴いた。朗読版でも明解に聴き取りやすくお勧めです。

Shown at his office in the War Ministry building, Tokyo, Japan, is the Honorable Mr. Justice R. B. Pal, former Judge of Calcutta High Court, who is one of the presiding justices at the International Military Tribunal for the Far East. 1947年12月1日

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 ・・東條さんが、「大東亜戦争は、自存自衛の戦いだった」と主張してやまなかった・・。・・東京裁判をやらせた当のマッカーサーが、帰国後、上院の委員会で東條首相の主張を認め、次のように述べている・・。

<Their purpose, therefore, in going to war was largely dictated by security.> この英文は、すべての日本人が覚えておかなければなりません。日本人はいまこそ、本当の「昭和史」を知るべきなのです。(渡部、同書単行版カバー)

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 ・・この本(=東條さんの宣誓供述書)は占領軍によって「発禁第一号」に指定され、出廻らなくなってしまったからだ。だが、この宣誓供述書は日本人の誰もが必読すべき書であり、「大日本帝国崩壊史」の最重要文献というべきものである。(渡部、同書文庫版カバー)

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(支那事変以後において米英の)中立義務は果たされたか(パール本、p144〜)

・・記録によれば、米英の軍事顧問団だけでも数百名にのぼり、戦闘に参加した米英人は二千名を超えている(補註#参照)。・・香港や厦門(アモイ)を通じ、あるいはインドシナを通じて、おびただしい兵器弾薬が白昼公然と送り込まれた。蔣介石政権は南京から武漢にのがれた。そのとき例のパネー号事件・・が起こるのであるが、この米艦パネー号には、敗走する中国の将兵と武器が満載されていた。蔣政権は武漢を追われて、さらに重慶の山奥に遁入する。すると英国は、ビルマから四川にいたる道路を開削して、援蒋ルートを開いた。このパイプを通じて、おびただしい軍事資材が送り込まれた。パイプはもう一本あった。それは仏印のハノイを拠点とする雲南ルートである。・・日本の外務省は、いくたびかこれら関係国に対して抗議し、中立国としての義務を遵守するように訴えた。だが、・・援蔣規模はますます拡大し、アメリカの航空機・・は、援蔣物資を重慶に空輸し始めた。・・(パール本、田中正明、同書、p146)

補註#: パール本の注(同書、p149)によると、米国両院の調査委員会(1945年)で「アメリカ軍人は、日米開戦の前、すでにフライング・タイガー社の社員に偽装して中国に行き、戦闘行動に従事していた」と認められた。また、1991年、米国防総省は、この民間義勇軍259名が正規兵であったことを認めた(同書、p149)、とのこと。 

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・・パール博士は、この点についてつぎのごとく述べている。「・・国際法の基本原則によれば、もし一国が、武力紛争の一方の当事国に対して、武器、軍需品の積み出しを禁止し、他の当事国に対して、その積み出しを許容するとすれば、その国は必然的に、この紛争に軍事干渉をすることになるものであり、宣戦の有無にかかわらず、戦争の当事国となるのである」・・「・・国際法においては、米国はすでにみずからの行為によって・・真珠湾攻撃のはるか以前から交戦国となっていたのであり、・・米国が中国の側に立ってこれに参加することを決定した瞬間から、日本は米国に対して、いつでも、どのような敵対措置をもとり得ることになったのである。」(同パール本、p148) ・・たしかに博士のいうとおり、国際法の基本原則からいって、長期にわたる米英の露骨なる援蔣行為は、明らかに“中立義務の違反”であり、みずから求めて、交戦国として、日本の前に立ちはだかっていたのである。国際法に準拠して開かれたはずの東京裁判において、いささかもこの問題が論議の対象にならなかったということは、まことに片落ちのはなはだしきものといわざるを得ない。(同書、p149)

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補註: 2022年2月に始まったロシア・ウクライナ戦争においても、米欧のウクライナ軍事支援が明瞭かつ巨額に行われている。パール判事のいう「宣戦の有無にかかわらず、戦争の当事国」に米国(とNATO)がなっていることは、私たちの目から見ると事実上明瞭である。つまり、パール判事のこの主張から75年を経た現在も「中立義務」は世界事実的には曖昧グレーゾーンとされているように思われる。

 この2022年、米欧にくっついて、私たちの日本国政府も(ドイツほど酷くはないにしても)ロシア経済制裁を行っており、「中立義務」から逸脱している状況である。プーチンのロシアがサハリン2の日本の権益を接収することを示唆したこと(2022年6月末頃)を、まさに「交戦国」に対するロシアからの報復、つまり日露相互の交戦(端的に「戦争」)と考えるべきなのかもしれない。日本は、「中立義務」を果たしながら、平和のための政治的国際貢献と経済的国益保全を図る大変良い機会であったこの2022年を、むざむざと悪い選択をしつつある。私たち庶民の暮らしにも厳しさが押しよせてきているのが実感される。

 ただし、私の乏しい現状把握ではあるが、日本はサハリン2権益をまだ保持することになっているようなので、水面下の外交では日本もしたたかでありたいと努めているのかと感じられる。ドイツはじめ欧州が受けたノルドストリーム2を爆破されるというようなテロ犯罪攻撃(用語的には「サボタージュ」と呼称するらしい)も、日本に対しては(今のところ)為されてはいない。・・いずれにせよ、このように日本がロシア・ウクライナ戦争に対して「中立義務」から逸脱している行いに関して、私たち国民には、必要な情報が足りていない。

 ロシア・ウクライナ戦争もある程度長期化することと思われる。米欧のウクライナ軍事支援が続く限り、泥沼化は規定の路線のように思われたし、これからもそのように進むであろう。今度の戦争によっても、世界のマネーを支配する金融資本とその傘下にある巨大な軍需産業やエネルギー産業などは膨大な利益を上げているという。対照的に、戦争当事国の人々の生命が脅かされ暮らしが苦しいのは言わずもがな、「中立義務から逸脱」している(=戦争の準当事国になっている)米欧日などの庶民の暮らしは厳しくなっている。

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補註続き: 昭和12年からの「支那事変」の長期化・泥沼化を理解するためにも、2011年からのシリアでの傭兵による代理戦争(=内戦と呼ばれているが実際には傭兵が送り込まれている)、そして2014年からのネオコンの支援によるウクライナ政権転覆から始まる対ロシア戦争、などの現代の戦争の推移を理解することが大きな示唆を与えてくれているのだろう。

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 今日は上皇さまのお誕生日。令和となって祝日からは外れてしまったけれど、私たちは静かにお祝いしたい。

 そしてまた今日は東條さんの命日である。渡部昇一「歴史の証言」を読み進めたいと思う。渡辺さんのこの本は、単行本が平成18年(2006年)の刊行なので、東條さんが亡くなってから60年ほども後の出版ということになる。

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