読書ノート

今年 又た雨に苦しむ

2016年6月16日 木曜日 雨

一海知義 漢詩一日一首 平凡社 1976年

蘇軾の五言古詩「寒食の雨(其一)」より

年年欲惜春,春去不容惜。
今年又苦雨,兩月秋蕭瑟。

年年 春を惜しまんと欲するも,春去って 惜しむを容(ゆる)さず。
今年 又た雨に苦しみ,兩月 秋のごとく蕭瑟(しょうしつ)たり。

年年、行く春をいとおしむ気持ちはあるのだが、春は勝手に去ってゆき、ゆっくり惜しませようとはしてくれぬ。そんな余裕も与えてはくれない。 そればかりか、今年の春は雨になやまされ、このふた月、まるで秋のようにわびしい日がつづいた。(一海、同書、p179)

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中国の寒食は、冬至から百五日目、陽暦でいえば四月の初旬である。この日は煮炊きをやめ、あらかじめ作っておいて冷たい食物をたべるから、寒食という。旧暦では春の終わりである。(一海、同書、p178)

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補注

一海さんの漢詩本を続けて読んでいる。上記の蘇軾の寒食の詩は春の終わりの時期。

北海道では冬は5-6か月の長さでひたすら続き、凍てつく。重い雪で屋根が潰されそうになる。それでも5月になれば春としたいが、やっぱり寒いのである。今年の四月下旬に植えた栗とアンズも5月の寒さで葉っぱが酷い凍害を受けた。春らしくない日が続く。6月ともなればスズランが一斉に咲き、オダマキも咲き、牡丹や芍薬もクレマチスもツツジも次々と咲いてゆく。けれど、6月もやはり肌寒く、百花繚乱の花たちの喜びに水を差す。それでも今は針槐(はりえんじゅ・ニセアカシア)の花が山裾を埋め、上品な甘い香りが初夏を宣言している。今日は夜から雨の予報であったが、午後にはすでにしとしとと雨が降り出している。

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蘇軾の五言古詩「寒食の雨(其一)」
(壺齋散人注)http://chinese.hix05.com/sushi/sushi_2/sushi218.kanshoku2.html

自我來黄州  我の黄州に來りてより
已過三寒食  已に三たびの寒食を過せり
年年欲惜春  年年春を惜しまんと欲すれども
春去不容惜  春去って惜しむを容れず
今年又苦雨  今年又雨に苦しむ
兩月秋蕭瑟  兩月 秋蕭瑟たり
臥聞海棠花  臥して聞く海棠の花の
泥汚燕脂雪  泥に燕脂の雪を汚(けが)すを
暗中秘負去  暗中秘かに負ひ去る
夜半真有力  夜半 真に力有り
何殊病少年  何ぞ殊ならんや 病める少年の
病起頭已白  病より起きれば頭已に白きに

蘇軾の五言古詩「寒食の雨(其二)」
(壺齋散人注)http://chinese.hix05.com/sushi/sushi_2/sushi218.kanshoku2.html

春江欲入戸  春江 戸に入らんと欲し
雨勢來不已  雨勢 來って已まず
小屋如漁舟  小屋 漁舟の如く
濛濛水雲裏  濛濛たり水雲の裏
空庖煮寒菜  空庖に寒菜を煮
破竈燒濕葦  破竈に濕葦を燒く
那知是寒食  那ぞ知らん是れ寒食なるを
但見烏銜紙  但だ見る烏の紙を銜むを
君門深九重  君門深きこと九重
墳墓在萬里  墳墓萬里に在り
也擬哭途窮  也た途の窮するに哭せんと擬す
死灰吹不起  死灰 吹けども起こらず

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https://tw.answers.yahoo.com/question/index?qid=20080712000010KK05127 のサイトより原文を引用:

自我來黃州,已過三寒食。年年欲惜春,春去不容惜。
今年又苦雨,兩月秋蕭瑟。臥聞海棠花,泥汙燕支雪。
闇中偷負去,夜半真有力。何殊病少年,病起頭已白。

春江欲入戶,雨勢來不已。小屋如漁舟,濛濛水雲裏。
空庖煮寒菜,破竈燒濕葦。那知是寒食,但見烏銜紙。
君門深九重,墳墓在萬里。也擬哭塗窮,死灰吹不起。

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