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文学に於て、最も大事なものは、「心づくし」というものである。

2020年12月23日 水曜日 曇り


太宰治 如是我聞 ちくま文庫版太宰治全集10 1989年(オリジナルは昭和23年)

文学に於て、最も大事なものは、「心づくし」というものである。・・・(中略)・・・作者のその「心づくし」が読者に通じたとき、文学の永遠性とか、或いは文学のありがたさとか、うれしさとか、そういったようなものが始めて成立するのであると思う。(太宰、同書、p422)

 ・・時に、君のごひいきの作者らしいモームは、あれは少し宿酔(ふつかよい)させる作家で、ちょうど君の舌には手頃なのだろう。しかし、君のすぐ隣にいる太宰という作家のほうが、少なくとも、あのおじいさんよりは粋なのだということくらいは、知っておいてもいいだろうネ。(太宰、同書、p422)


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先輩たちは、も少し、弱いものいじめを、やめたらどうか。所謂「文明」と、最も遠いものである。それは、腕力でしかない。(太宰、同書、p427)

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いのちがけで事を行うのは罪なりや。そうして、手を抜いてごまかして、安楽な家庭生活を目ざしている仕事をするのは、善なりや。おまえたちは、私たちの苦悩について、少しでも考えてみてくれたことがあるだろうか。(太宰、同書、p428)


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・・私がこの如是我聞という世間的に言って、明らかに愚挙らしい事を書いて発表しているのは、何も「個人」を攻撃するためではなくて、反キリスト的なものへの戦いなのである。  ・・・(中略)・・・  私の苦悩の殆ど全部は、あのイエスという人の、「己れを愛するがごとく、汝の隣人を愛せ」という難題一つにかかっていると言ってもいいのである。(太宰、同書、p429)


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