2024年2月9日 金曜日 暖かい(札幌の道は少し雪解け)(が、ときどき雪ちらちら降る)
佐藤洋一郎 食の人類史 中公新書2367 2016年
和食の文化
・・農林水産省によれば、・・個々の料理やそのメニューではなく、文化、つまり「日本の伝統的な食文化」である。そしてそのこころは、「多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重」、「栄養バランスに優れた健康的な食生活」、「自然の美しさや季節の移ろいの表現」、「正月などの年中行事との密接なかかわり」の四つである。(中略)
・・一汁三菜の「汁」は豊富な水の存在を背景にする。出汁の美味さは、多様な魚種があることのほか、軟水があることが条件になる。内陸に塩がなく、しかも川が急流であることが、日本列島の水を軟水にしたといわれる。
さらに南北に長く気候の変化に富むこと、火山列島であって複雑な地質を持つことから、採集の対象となる植物資源も多様で、またさまざまな栽培植物の栽培を可能にした。明確な四季が、「旬」をもたらした。複雑な海岸地形は海岸線を長くし、また潟湖の発達を促し、新鮮で多様な魚種の生息を可能にしてきた。多様な食材の存在は、こうした、気候や土地、地質の多様性に支えられているのである。全体として湿潤な気候は、また、発酵食品の発達を促しもした。
懐石を支えた茶の文化は、チャという植物や木、紙、タケなどモンスーン気候帯に固有の植生に支えられた文化でもある。(中略)このようにみれば、和食の文化が、日本列島の気候風土やそれに育まれた文化によって支えられてきたことは明白である。・・・(中略)・・・
和食の再認識は、じつは日本の風土の再認識でなければならない。(中略)食の営みは、土を離れては、あるいは人と人との関係を切り離したところでは、持続しえないのである。(佐藤洋一郎、同書、p270-273)
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