読書ノート

シシの肉

2019年2月15日 金曜日 曇り

湯川博士 落語うんちく事典 河出文庫 2008年

シシの肉

江戸時代の人たちは、豚や牛は食べない。だがシシの肉(猪、鹿など獣肉の総称)は食べた。中でも猪を好んだのは、その突進力にあやかりたいからだ。猪口(ちょこ)、猪牙(ちょき)船、猪突など猪のつくことばも多い。ただ大威張りで食べだしたのは、江戸の後期、天明年間(一七八一〜八九年)くらいからだ。・・・(中略)・・・ さて。どうして野生の獣を食べることが一般化し、お店まであるのか。これを考えると、旬と同じ考えに行き着く。つまり自然のものや野生のものは生きる力があり、その活力をいただくという気持ちがあった。・・・(中略)・・・ なぜ牛や豚を食べなかったか。それは人に飼われた家畜には自然の力(精霊)が宿っていないと考えられたからだ。・・・(中略)・・・ 日本人が世界でも珍しく、家畜を食べなかったが野獣は食べたというのは、仏教の教えというより、自然の力を尊ぶ精霊崇拝に依るものではないか。(湯川、同書、p29)

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