2016年12月24日 土曜日 快晴
豊田菜穂子 ダーチャですごす緑の週末 ロシアに学ぶ農ある暮らし WAVE出版 2013年(2005年発行の「ロシアに学ぶ週末術〜ダーチャのある暮らし」を新装・改訂したもの、とのこと)
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“ダーチャの心”で暮らしを見直そう
ロシアのダーチャの存在意義、それは、野菜づくりにとどまらず、モノを自分でつくりあげるという基礎生活力を養う場であることだ。・・・土地の確保にこだわると、ダーチャへの道は果てしなく遠く思えてしまう。タダ同然で土地を与えられたロシアと、土地が狭くてバカ高い日本とは、そもそも土俵が違いすぎる。・・・私たちがダーチャ暮らしに魅力を感じるのは、郊外に土地をもつ、という所有欲をそそられるからではなく、自然や土と親しみ、野菜やモノをつくり、自分の潜在能力を試してみる、という行為に惹かれるからではないだろうか。・・・そう思って、とりあえずベランダで本腰を入れて野菜づくりを始めてみた。・・・もちろん、里山に土地を得て、本格的なダーチャを築くことも夢ではないが、肝心なのは”ダーチャの心”。日本でも数十年前まで当たり前のようにしてきた「生きるための基本的努力」を、暮らしのなかでほんの少しでも意識をもって、そして楽しく試みたいと思うのだ。(豊田、同書、p176-179より抜粋)
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文明の利器とダーチャの共存
驚いたのは、何軒かのダーチャで取り入れていたコンポストトイレ。「ダーチャで最も近代的な設備」とアレクサンドルさんは言っていたが、思いのほか使い勝手がよく、匂いもしなくて衛生的だ。いわゆる”ぽっとんトイレ”も健在ではあるが、衛生面、環境面からみて、今後はコンポストトイレが普及していくのかもしれない。(豊田、同書、p111)
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今日は劇場、明日は菜園
雪に閉ざされる冬は、ロシアの演劇シーズン。冬は劇場に通って、夏はダーチャ。夏だってダーチャに行かない日は、映画やコンサートに出かけるもよし、ダーチャでも晴れた日は畑を耕し、雨の日は本を読む。都市文化と大地に根ざした生活の間を自在に行き来してしまうロシア人は、いってみれば「知的な農民」だ。(豊田、同書、p142)
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「そもそもダーチャが普及するようになったのは、ヒロシマ・ナガサキへの原爆投下がきっかけです。・・核の脅威にさらされた冷戦時代が始まり、政府は万が一、モスクワなど都市部に原爆が落とされた場合を想定し、爆心地から100キロ以上離れたところに非難すれば安全だろうと判断しました。こうして1950年代、郊外への道路が建設され、ダーチャが急速に発展したのです。」・・ダーチャの一区画が600平方メートルと定められたのも、それだけあればひと家族が生きていけるだけの食料を調達できる、との計算に基づくものだったという。ダーチャ普及の要因は、これまで諸説聞いてきたが、放射能から逃れるための避難場所としての側面もあったとは・・。ヒロシマ・ナガサキ、そして今、フクシマを経験した日本人としては、複雑な思いに駆られる。(豊田、同書、p172-173)
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