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いざという時が来てコミンテルン中央の指令が発せられたら内戦に突入し、ブルジョワジーの政権を倒して武力で権力を奪取しなければならない。それがコミンテルン加盟条件に課せられた義務なのである。

2023年2月1日 水曜日 曇り

江崎道朗 コミンテルンの謀略と日本の敗戦 PHP新書1108 2017年

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 ・・「民族・植民地問題についてのテーゼ」も、「共産主義インタナショナル(コミンテルン)への加入条件についてのテーゼ」も、運動論として実に徹底している。これだけの組織論と運動論が、コミンテルン創設直後の一九二〇年の段階ですでに練り上げられていたのである。  そして、このような過激なまでの武装蜂起志向と弾圧体質を持ったコミンテルンが、軍隊のような鉄の規律を持って、世界において諜報工作と宣伝工作を行い、内部穿孔工作を仕掛け、帝国主義同士の戦争を引き起こして、敗戦革命へと導き、ブルジョワジーを打倒してプロレタリア独裁の世界を築き上げるべく、一心不乱に活動を展開したのであった。  その流れは現在に至るまで脈々と続いているのである。(江崎、同書、p95)

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「平和」「正義」という美名の下に行われる殺戮(江崎、同書、p90〜)

 ・・共産党は常に武力を蓄えて備えを怠らず、いざという時が来てコミンテルン中央の指令が発せられたら内戦に突入し、ブルジョワジーの政権を倒して武力で権力を奪取しなければならない。それがコミンテルン加盟条件に課せられた義務なのである。(江崎、同書、p92)

 ・・コミンテルンの組織論・運動論にとって一番重要な点は、誰が共産党の敵なのかを決定できるのが、共産党の中央執行委員、すなわち、トップだけだということだ。トップが「第二インターナショナルはブルジョワジーの手先だ」といえば、共産党員は全員、第二インターナショナルと絶縁するだけでなく、それを殲滅するために戦わなければならない。  また、・・共産党員であっても、コミンテルンの中枢が「彼はブルジョワジーの手先だ」といえば粛清される。トップが「敵だ」とレッテル貼りをすれば、誰でも殺すことができるのである。  ・・「ブルジョワジーやその手先が生き残っているあいだは、平和も築けないし、格差がない社会も作れない」という理論があるからだ。「平和と格差のない社会を作るためには、敵は殺せ」という考え方である。

 こういう組織論・運動論に立って、実際に言論弾圧や粛清が行われてきたのであった、これらはすべて、コミンテルンの設立どころか、その前のボリシェヴィキ結党時から続いてきた体質なのである。ロシア革命中の赤色テロも、トロツキーの暗殺も、スターリン時代の大粛清も、決して偶然に起きた事件ではないのだ。

 「平和」「正義」という美名の下に行われる殺戮・粛清だからこそ、人はいつしか道徳的な痛痒を感じなくなっていく。ここが恐ろしいところなのである。

 二十世紀以降、共産主義の理想を実現するために、何千万もの人々が残虐に殺戮されていったことを、われわれは決して忘れるべきではないし、その虐殺が、端から国際共産主義運動の遺伝子に埋め込まれていたことも忘れるべきではない。(江崎、同書、p93-94)

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